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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」
373
:
隊長
:2010/01/27(水) 19:23:02
「鹿狩り」
俺に狩を教えたのは親父だった。
幼少の頃を思い返せば冴えない親父さ。
いつもはソファーに寝そべって、酒を飲んではフラフラしてた。
たまに思い出したかのように俺の悪戯に腹を立てて、酒瓶で小突かれたもんだ。
そんな親父も狩の時は眼がピカピカに輝いていた。
子供の俺を森に連れて、磨きのかかった猟銃を構えていたのを憶えている。
2連の猟銃にはいつも弾が1発だけだ。
親父は射撃の腕がピカイチだったから、鹿も熊も一撃で仕留めてみせたんだ。
獲物の血抜きをしてた親父の感謝するような眼は忘れない。
最高の親父さ、他の誰よりも強く逞しい男だった。
狩の時だけはそう思えて仕方がなかった。
初めて触らせてもらった猟銃は、少し重たく感じた。
鈍く光る引き金はそれ以上に重く、子供心に安易に引いてはならないもんだと理解した。
親父と肩を並べて森を歩き、いつか一緒に銃を構えるのが夢だった。
その夢が叶う前に親父は死んじまったけれど。
病気だった、コロニー外れのトラクターに住む俺たちは、まともな医者にも診てもらえなかった。
床に伏せ、苦しみながら親父は猟銃を俺に渡した。
今まで獲物を1発で仕留めてきたあの猟銃だ。
「仕留めろよ…1発で…だ」
そういって親父はズボンのポケットから、1発のバックショットを取り出した。
強くしっかりと握られたそれを俺は銃に装填、中折れ式の銃身を元に戻すと親父の頭に狙いを定めた。
俺の初めての獲物は親父だった。
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