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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

372隊長:2010/01/20(水) 01:06:41

『さて、いかがでしたか?』

暗がりから響く声は同じ部屋に居る女性に向けられたものだった。
言葉の主を見ることなく、少ない光にぼんやりと輪郭を浮かせる女性は口を開いた。

「何故、彼等に情報を与えなかったのかが、気になるところですが」
「特にどうと言えるような事でもありません、我々の役割の障害になる程の存在ではないでしょう」
『…』
『貴女は、一体どちらの味方なのです?』
『我々とは私達人間側の事でしょうか、それとも貴女方サイレントライン側の事なのか』
『――セレ・クロワール、この場ではっきりとさせていただきたい』
『私はこれ以上、市民を、部下を、そして友人であるさっきの二人を、売るようなことは沢山なんだ!』

しゃがれた声は喉に負担をかけながら、その声色を強くする。
暗がりから聞こえた金属音は間違いなく、銃の撃鉄を起す音だった。
しかし、セレと呼ばれた女性は眉一つ動かすことはなかった。
その表情に恐怖の欠片さえ見られない。まるで、人間ではないかのように。

「どうか落ち着いて下さい、老体に響きます」
「それに、ここにいる私を撃ったところで、コーテックスで働く若い女性社員が死ぬだけで、私は死にませんよ」
『…やはり、やはり貴女は向こう側なのですか』
「わかりません。私自身、どちらに属するかなど」
「ですが、言える事はあります。一つだけ」
「XA-26483をマークしてください。今の私にはこれが精一杯です」
「身体の方をよろしくお願いします」

その言葉と共に、女性は床に崩れ落ちた。
その場に倒れる女性をどうするか考えながら、暗がりの男は長テーブルの上のライトを消す。
真っ暗な部屋に女性と一泊の宿泊費を残し、男も部屋を後にした。


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