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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

352:2009/12/24(木) 12:45:29
鈍く沈んだ赤の装甲は大空へと投げ出された。
びゅうびゅうと吹き付ける風は戒世の身体を叩き、ぴくりとも動かぬ巨体を小さく震動させる。
落下速度が上がるにつれ戒世の鋼の身体は表面温度を低下させ、赤い装甲には薄らと白い霜の化粧が施された。

『現在の高度、3500フィート』
「これよりパラシュートを展開する」

男は目の前のコンソールパネルに指を伸ばす。
光る文字を追うように指で画面をこつこつと小突いた。

「盾、全てを弾く盾かどうか――」

戒世の背中に取り付けられたバックパックは、搭乗者の命令に従いその内容物を放り出す。
展開された大きなパラシュートが風を受け止め、重力に抗おうとしてみせた。
抵抗を受け落下速度が大幅に減る。戒世とハングマンの両者は、落下の最中に浮遊したような奇妙な感覚を黙って体感した。

『ハングマン、憶えていますね?今回のミッションでは敵に発見されてはいけません』
『ブーストの連続使用、武器使用は共に禁じます』
『敵に索敵、攻撃された場合は速やかに撤退、指定の位置で次の命令を待つ――とする』
「発見されてからの反撃は?」
『構いません。ただし、現在の状況は敵の砦への単独侵入、その機能を索敵されずに停止させるのが目的です』
『できるだけ、依頼通りにこなしてください』
『それに、流暢に反撃していれば貴方といえど永くは持たないでしょう。もう少しご自愛ください』
『御社にとっても貴方は―――』
「500フィートを切った、低出力でブースターを起動する」


戒世がその大木のような二つの脚で大地を踏みしめる。
背中のバックパックは切り離され、役目を終えたソレは静かに土の上へ横たわる。

『現在の地点より南に3キロ、そこが目標の砦です』
『辺りを警戒するMTに見つからないよう接近してください』
「…ご自愛、盾に何を愛せというんだ」
『ハングマン?』

男はボソリと唇を動かさぬ程小さな声でボソリと呟いた。
コックピット内の空気が震動せぬよう小さく小さく。

「砦、好都合だ。此処なら私を試せる!盾として私がどれ程なのか」
『ハングマン!?』
「不都合があるなら上に伝えるんだな、次からは隠密等、装甲の塗装が地味な軽量級ACにやらせろと!」
『それはっ…ごもっともな理屈ですが…』
「私には私の、戒世には戒世のやり方がある!良く見ておくんだな!」
『ハングマン!何を!?』

戒世は搭乗者の意思を読み取るかのようにその眼の光を一層強める。
装甲表面の霜を粗方吹き飛ばし、超強高度のスクリーンを展開した。
背中にある一対の大型ブースターを起動させ、噴射口を守る分厚い装甲を展開した。
背中から高出力の推力を噴出し、戒世のその重い身体を無理矢理に前へ前へと押し出した。


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