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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

314 ◆lolicon8k6:2009/11/17(火) 18:47:58
二人は淡々と現状を報告し合い、少し雑談を絡めながら溜まっていたストレスを和らげようとしていた。
現に二人はこの森で丸一日程過ごしている。いつ敵と遭遇しても良いようにと神経を張り巡らせていたのだから、溜まるストレスも相当な物だろう。
緊迫した空気の中では自然の発する声も雑音に等しい。彼等の状況や無線のやりとりも頷けた。
男の顔付きが不意に変化する。先程までは久しく会ってない友人との再会に胸躍らせる青年のような表情だったが、そこに青年の面影はなく急に老けたかのように見える。
目は吊り上がり、眉間のしわがぐっと深くなる。獲物を探す獣のような、辺りを見据える烏のようなそんな表情だ。
今しがた眠る兵器を操り、沢山の命を焼き消して来た者の表情―――兵器のパイロットなのだと、そう実感させる。
森林の雑音が騒がしいなか、男は自然の声とは違う、金属の擦れる微かな響きを耳にしたのだ。
ゆっくりとその場で立ち上がり慣れた足つきで兵器の横たわった身体を登っていく。
「――さて初めるか」
そう呟くと抱えている小さな機械の、飛び出ているダイヤルとは別に赤いカバーで被われたスイッチに指を伸ばす。
パチンと軽快な音をたてる。すると機械は突然動きだすかのように冷却ファンが回り、何かを作動させた。
「レイヴン、時間がない。返答せずに俺の話を聞いてくれ」
男は焦るように続ける。
「この外部無線も敵の耳に確実に引っ掛かってる。それを逆手に取りたい。」
「このまま敵と長期戦になるのは避けたい。そこでだ、俺達の機体は壊れた。いいか?オーバー」
「俺は役者には向かないが…了解。しかしさっき聞かれてると言ってたが作戦を喋って大丈夫なのか?オーバー」
「それは問題ない、その為の特製無線だからな。少しばかりの小細工だ」
「破損状況なんかは大袈裟に頼む、一気に叩きたい。時間だ…3、2、1―――」


男の抱えた無線機は役目を終え、冷却ファンの起動を停止させた。
「聞くのを忘れていたな、機体の状況を知らせてくれ。任務は継続できそうか?オーバー」
「駄目だレイヴン、腕の破損が酷い。使える武器が限られている、そっちはどうだ。オーバー」
「問題ない…と言いたいが、脚の推力をやられた。囲まれたら一溜まりもない。オーバー」
「敵に遭遇しないことを祈りたいな。河沿いに進んで行く、レーダーに映りしだい合流しよう。オーバー」
「了解した、何かあれば連絡する。オーバー」
「敵も、俺達がアナログ無線で連絡しているなんて思いもしないだろうからな。」
はははと軽い笑い声と共に無線は閉じられ、男の耳に入るのは森の雑音と微かな金属音だけだった。
さっきの無線の後、男の耳に入る金属の擦れる音は少しずつ大きく、そして音の数も増えている。
どうやら思惑通りにいったようだ。
男は腰掛けていたコックピットハッチから降り、ハッチの付け根にある外部ロックを解除した。
コックピットを守る分厚い金属ハッチが気密用ガスを勢い良く吐き出し、守られていた内部を露出させる。
男は座りなれたシートに腰掛け、目の前のパネルに映されている光学スイッチを数回指で叩いた。


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