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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

313 ◆lolicon8k6:2009/11/17(火) 18:47:01

「主の平和」


木漏れ日と鳥の声、河の流れに深い霧。
人など軽く飲み込んでしまう程ぼうぼうと茂る草木、中でも一番高く、茂る葉の量も一際多い背高のっぽうの大木が目立つ。
他の木よりも背伸びし、多くの太陽光を得ようとしたのだろうか。霧深いこの森でそれがどれだけ効果的かはわからない。
そんな木の根元、幾多もの露出した大小の根が折り合い圧し合いしながらできた、大きく狭い空間。
そこには大木には負けるものの、それでも大きな何かがもたれ掛かるように鎮座している。
重厚な金属が幾重にもなる身体を持ち、その身体は何かが焼け付いた臭いと硝煙の残り香が鼻を衝く。

 〝兵器〟 このおとぎ話をそのまま現したような森に似合わない、超現実的な代物だった。

が、その兵器には腰の辺りまでシートが被せてある、頭部付近には無理矢理折られたまだ葉の付いている太い枝が盛られていた。
こうして見るとこれは兵器ではなく、スヤスヤと寝息をたてる人にしか見えない。
大きな木の根元で眠りに付くという光景が更にそう錯覚させた。
自身の活躍を夢見ながら眠る兵器の足元、そこには錯覚ではない本当の人間が忙しそうにしていた。
ぶつぶつと小声で喋り、時折辺りを見渡してはまた重く低い声を押し殺して小言を呟く。
すらりと伸びる身体に抱える小さな機械、そこから飛び出る数々のダイヤルを回しながら小さなマイクに鉛のように重い声で小言を一つまた一つ。



「こちらクラフツパーソン、レイヴン聞こえるか?オーバー」
返ってくる雑音は長身の男の脳を更に熱くさせるかのように頭を沸騰させ、巨体を小刻みに震わせるだけだった。
血が上り思考を低下させている自身の性格を制御するように大きく息を吸い、同じように吐き出す。
しかしこの森特有の濃い酸素は、彼の思考を更に奪うだけだとは知る由もないだろう。
片手で顔を拭い、またも小さな機械に手を付ける。
「こっちも駄目か、こっちも――、レイヴン聞こえるか?こちらはクラフツパーソンだ。オーバー」
雑音に紛れ聞こえる懐かしい人の声、男は目を見開き歓喜の表情を抑え、機械の数値をゆっくり調整する。
「――ちら…ヴン、…レ―ヴン、―えるか?こちらレイヴン、クラフツパーソン聞こえるか?オーバー」
ついにしてやったぞと拳をッグと決め、手に持っていたヘッドセットを頭に掛ける。
「こちらクラフツパーソン、聞こえているぞレイヴン。オーバー」
「ふぅ…安心したぞ。どこかでやられたのかと思っていたよ。オーバー」
「そんな玉じゃぁないさレイヴン。オーバー」
「そいつは良い、さっそく現状の報告を。何故外部の無線からコンタクトした。オーバー」
「機体間での通信は敵の耳に引っ掛かっていた。俺達が散り散りにされたのもそれが原因だからだ。オーバー」
「なるほど、しかしそれじゃぁ俺がアナログ無線を引っ張り出してなきゃまったく無意味だったんじゃないか?オーバー」
「アンタの勘が優れていたから助かった。オーバー」


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