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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

289名無しさん@コテ溜まり:2009/10/12(月) 19:27:14

「絶望の蒼、希望の黒、烏の名」


暗闇。
どこまでも続く闇の中、独りの男が涙を流す。
この闇は母なる黒、生を謳歌する寸前の闇、男はそう思っていたのだ。
男の過去を見て見れば、それはなんとも不遇なもの。
烏になることで人としての何かを失い、死を目前に大切なそれを取り戻した。
男は一度死んでいる、それはそれは勇ましくとてもとても儚げに。
そして死に招かれた今、自身の生き方に少しだけ後悔していた。

「…すまない」

男は力なくそう言った、それは心の言葉ではく口からでた紛れもない空気振動。
そのため、その言葉は誰かの耳にも届くのだ。

「よかった、意識があるみたいだ」
「ナナ兄さん、このひとはなんていったの?」
「さぁ、誰かに謝っていたようだけど」
「なんであやまるの?なにかわるいことをしたの?」
「アミ、静かに。この人が起きてしまうよ」

突如聞こえた人の会話に男は困惑した。
彼自身、既に自分は死んでいるものだと考えていたからだ。
息を呑み、目の前の闇を振り払おうと立ち上がる。
すると、どこまでも続くと思えた闇は簡単に途切れ瞳を焦がさんばかりの光が視界を被う。
長く闇に慣れていたせいか先程まで泣いていたせいかはわからないが、大粒の涙が頬を伝い零れ落ちてゆく。


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