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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

206シャイアン ◆sjPepK8Mso:2007/02/13(火) 00:35:29

 ※

 昨夜の戦闘でまともに生き残ったのは自分だけだと、教官に教えられた。
 ロッフが教官にハンナも生き残ったはずだと言すれば、教官は五体満足に生き残ったのはお前だけだ、と言いなおした。
 ハンナのACは腰に一撃喰らっていたらしい。コクピットがひしゃげ、足が潰れたと言う。やけに淡々と言う教官に、無性に腹が立つ。
 釈然としない気持ちでピカピカのレイヴンライセンスを受け取り、退出した。
 廊下を歩く。
 もう、ロッフ=バークラフは一人前のレイヴンとして認められた。教官の言を借りるとするならば、キサラギ地上第二支社監視下レイヴン養成所・第十六期生唯一、レイヴンとなれた男である。
 気に入らなかった。
 こんな筈じゃなかったのだと思う。
 ただの一瞬で、昨日昼食を共にした人間が死に、理由を語ってくれた人間は負傷した。
 自分がレイヴンとなって、そうやって死んだ奴らにはお詫びの一つも出ないなんておかしいと思う。教官から聞き出した、ハンナが入院している病院の住所を書いた紙をポケットに突っ込んで、宿舎の自分の部屋に戻る。
 訓練生のいなくなった宿舎の管理人室では、今日もせんべいをかじるくそばばあの姿があって、それにも腹が立った。
 半年、ともすれば一年以上の付き合いになる奴がいっぺんに死んだというのに、全く動揺しないで、むしろ楽になったぐらいだとでも言いたそうな顔をしている。
 クソ女め、と口の中で呟くと、ババアがぐるりと首を回してロッフを睨んだ。超能力でも持っているんじゃないかと思えた。ひるんだロッフにババアは窓越しに、腰抜け野朗が全員いなくなってせいせいするんだよお前もさっさとどっか行きな、と言うような事をまくし立てた。
 言われなくても。
 ババアが腹を立てるのはおかしいと思いながらも、自分のチームの部屋に入って、その部屋の様子に愕然とする。
 ここ半年の間に持ち込まれたものが、片っ端から掃除されていた。ハンナが持ってきたものなんてほとんどなかったが、ミレイが持ち込んだ装飾品はのきなみ引っぺがされており、テレビも無くなっていた。生けてあった花が無く、ゴミ箱も取り払われていた。
 まるで、そこには最初から誰も住んでいなかったようだった。
 ミレイが生きていた痕跡はもうこの部屋のどこにも無い。
 死んだ人間へのはなむけぐらい残してくれたっていいのに、部屋はどう押しようも無いぐらいに寂しかった。
 歯を食いしばる。今にも泣きそうになる。悲しい。
 荷物を纏める為に、自分の寝室に入って、服やらなにやら何まで詰め込んで、最後の最後に備え付けの机の上を見る。そこには雛鳥の死体がある。眠ったように死んでいる。

 レイヴンの訓練所から繁華街へ抜ける道を通ると、必ず公園を突っ切る事になる。その公園の入り口から真っ直ぐ二十歩右二十歩の公衆便所のひさしの下には、鳥の墓がある。こんもりと盛り上げられた土の中には、死体が入っているのだろう。アイスの棒が山に突き立てられて、こう書かれている。
 「雛鳥の墓」。


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