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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

193シャイアン ◆sjPepK8Mso:2007/02/12(月) 23:47:50


 オーバーホールが終わって、帰ってきた機体の動作チェックをやった。
 エンジンを温めて、OSの強制割り込みをカットする。各部の動作状況を確かめるのに、動作の固定化は寧ろ邪魔だ。
 ジェネレーターが暖まる前に予備電源を動かして、機体コード・グレイラの各部に信号を送る。
 汪生はチャンネルを全身に割り当てて、帰ってくる信号を拾った。二百八重送った信号の全てが演算装置に帰着したのを確認して、マニピュレーターを動かす。
 ブースターの偏向速度を調
「汪生、おうき! 緊急通信、キサラギの偉い人から、そっちに送るよ」
 すっかり機械の方にのめり込んでいた汪生は、外部からの声に急に引き戻される。
「え? はい、わかりました。回線は開きましたから、こっちに転送してください」
 こんな夜に緊急回線なんてふざけてんじゃねーわよ、下らない用事だったらぶっ殺してやる。
 オペレーターのサオリが呟く声が丸聞こえである。
 依頼だったらいいな、とは汪生自身も思うが、下らない用事だったらぶっ殺すとまではさすがに思わない。
 つい最近にアリーナの頂点に立ち、ナインブレイカーと言う大それた称号を頂いてからは、むしろ仕事の依頼が減ってしまって、困っている所なのだ。
 アリーナで買った金の半分をスラム層の子供たちに寄付してしまった所為で、金にもあまり余裕を言ってはいられない。寄付した後一ヶ月は、サオリに顔を合わせる度にばかめばかめと文句を言われた。
 賃金の半分以上を協会側から支払われてる癖に、人の行いにケチをつけるなと言いたい。
 モニターの真ん中に現れたウインドウには豚が映っていた。
「凄い顔ですね」
 思わず言ってしまった汪生はジト目で睨まれたが、そんなことに構っている暇も相手には無いらしかった。
『仕事の依頼を頼みたい』
「はいはい、ご用件承ります」
『先程、この街の第三防衛ラインが破られた。攻めてきているのは昨日、ミラージュに壊滅寸前まで追いやられたと言う、わが社の生体機械課の防衛部隊残党だ。生体機械課が持つ総戦力よりいくらか少ないが。防衛部隊の隊長は、ミラージュに攻撃されたにも関わらず、キサラギ本社が裏切ったのだと、訳のわからない事を言っている。報復をするつもりらしい。
 我が社の出資者の三十パーセントがこの街に集中している。それを破壊することが敵の目的だろうが、先程ミラージュから、保管していた毒ガスが奪われたと報告があった。この街全域を覆えるだけの量らしい。富民街を潰すだけなら、そのような量は要らないはずだ。彼らを止めて欲しい』
「毒ガス!? そんなものを使うつもりでいるんですか?」
『真偽はわからない。しかし、もし本当だとしたらそれを放って置くことは出来ない。報酬はそちらの要求に従おう』
 本当のところを言うと、この時点で汪生は騙されているのだが、汪生自身がそれには気付かない。企業が言う正当な話には必ず裏があるはずだった。
「わかりました。報酬は40000crでいいです。そう言う事だったら、僕自身が進んで止めたいぐらいだ」
 お人好しは世の中を渡るのが下手なのが常識だ。目的に便乗して、搾り取れるだけ搾り取る度胸が無いと、レイヴンなんて普通はやっていられない。あっというまに素寒貧になってしまう。
 通信が切れる。
 第三防衛ラインの崩壊が確認されたと言う事は、すぐに街に攻め込んで来ると言う事だ。急がなければならない。
 起動モードをクルージングモードを飛ばしてコンバットモードにして、グレイラが壁に立てかけた二挺のマシンガンを手に取る。
 通信。
『一体なんだったの?』
「こういうときぐらい、盗み聞きをしといたらいいんじゃないですか? 仕事の依頼です。この街に攻め込んでいる敵を止めます。……グレイラ、起動しますよ!」
『報酬の交渉は!?』
 グレイラは立ち上がって、狭い排気口から目一杯に空気を吐き出す。耳を劈く廃棄の音が、狭いガレージ内に広がって、サオリは負けじと声を張り上げる。
「四万です! 利害が一致したんですよ。ふんだくる必要はありません」
 サオリが歩き出したグレイラにレンチを投げつける。細腕に似つかわしくない勢いがついたレンチは、装甲に当たって大きく音を立てるが、その音も廃棄の音にかき消される。
『アホ! 私のボーナスも考えろ!』


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