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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

191シャイアン ◆sjPepK8Mso:2007/02/12(月) 23:46:46
 声を向けられて、ロッフは直ぐに喋りだした。最初ッからそのつもりで話題を切り出したとも思える。一つのことが原因でレイヴンになろうという人間は、きっかけになった出来事に取り付かれる。
「俺は地下の貧民街から、くじ引きで地上に上がってきた人間の三世だ」
 ハンナが多少驚いたような顔。そもそも、地上というのが人類の帰るべき場所だとされつつも、地下と地上の環境はあまりにも違う。だから、貧民街のいらないと判断された人間の中から、抽選で地上で暮らす人間を選んだらしい。
 地上に出た結果、人間には一体どんな影響がもたらされるのか。理論はいくつも発表されていたが、実際に何が起こるかは、やってみるまではわからないのだ。貧民は生贄として地上で暮らし、企業は一丸となってその監視をした。
 この活動で人類に貢献したという貧民は、貧民層から一層か二層、位を上げてもらえるらしい。事実、コレで偉くなった貧民が治める街もいくらかあると、人は聞く。
 相当珍しいらしいが。
「当時、抽選で選ばれた人間は総勢で一万人もいたらしい。それなのに、今地上に存在する市外には、元貧民だと言う人間があまりにも少ない。東の方の市の市長に貧民出身がいるらしいが、西部の方ではそいつは成り上がりだと、嫌われている。テロだって少なくないらしい。元貧民は企業から庇護を受けてる卑怯者だってな。人間は差別的でなければ生きていけないし、俺が物心ついたころには親父も母さんもいなかった。……これじゃあだめか? もっと詳しく言わないといかんかな?」
 最近のレイヴン候補生は坊ちゃんばかりである。その坊ちゃんがする質問に、本気でレイヴンになろうだなんて奴がまともに答えてたらキリが無い。
「それだけ言えばいやでもわかる。それ以上言わなくてもかまわない」
「そうか、恩に着るよ。試験に合格するまでに恩は返すからさ、首を長くして待ってるようにな」
「誰がそんなものを待つものか」
 ハンナを尻目に、ロッフが雛を拾い上げる。どうせ死ぬのに。すぐに死ぬのに。ポケットからハンカチを取り出して凍える雛を包むロッフは、自分が何をしているのかわかっていないように見えている。
「無駄な事には賛成出来ないんだがな」
 まだ話し合わなきゃならないことは多いみたいだ、とロッフが笑って言った。


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