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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

190シャイアン ◆sjPepK8Mso:2007/02/12(月) 23:46:23
「渡り鳥だって群を作って南に飛ぶんだ。一匹狼は狩りも出来ずに荒野でのたれ死ぬのが常だ。他人の事を気にしたって罰は当たらないよ。隣の事情を知らずに、人間やってるなんて、馬鹿馬鹿しい」
 一体何を思っているのだろうかと思う。やはり、自分が言う事はくだらないと、心の中では全く相手にしていないのだろうか。
「まだ、レイヴンの候補生でしかないんだ。相手をひっぱたくことも無いだろう?」
 確かに甘えだ。わかって言っているのならともかく、最近のレイヴンの間には生ぬるい空気が漂っていると、最近はよく話しに登る。この原因こそが最近の訓練所のチーム制であり、訓練生の質の低下と馴れ合い根性である。荒んだ心でなきゃ人殺しなんか出来ないのに、レイヴンはかっこいいから、なんて理由で研修に来るお坊ちゃまが後を絶たない制で、ここ数年のレイヴンの質は下がりっぱなしだった。そこのところ、オペレーターの養成を担当する部署からも文句が出ているらしい。
 わかっていればいいのだ。
 突然、彼女が切り出した。
「お前は毒ガスを吸った事があるか?」
 問いに対して、ロッフは不意を突かれて素っ頓狂な声を上げた後、首を横に振る。
「いや」
「毒ガスを吸った時、人間はまず息苦しさを感じる。酸素が足りないことをいち早く察知した肺が神経に訴えかけて、酸素を得るように指示が出される。軽度の呼吸困難が危険信号だ。酸素は人間を動かす大事な要素だ。無いと苦しいに決まっている。呼吸困難になって、その上に毒ガスを吸うと、まず感覚器が侵され始め、次に脳が活動を鈍らせる。脳は酸素を多く使用している。人間の要になる脳が節約を始めると、ろくに考え事が出来なくなる。考え事が出来なくてまごまごしてる間に筋肉にも酸素が足りなくなる。体が毒に犯されれば、神経が麻痺して感覚がどんどん鈍くなって、最後には立てなくなる」
 用の無い畑の話は、誰が聞いたって興味を引ける話題である。ロッフはだまって聞いている。腕を組んで、考え事をしているようにも見える。右の頬が赤くなっていて、左の頬に蚊が止まっている。
「まだサイレントラインも見つかってない時の話だ。私が生まれた町の名前はフォークロア、人口四万五千人のクレスト管理区、富民街に私は住んでいた。街を襲ったのは塩素系の毒ガスで、助かったのは私を入れて十四人。キサラギが積極的にクレスト自治区に侵入した前例は無かったが、毒ガスを最も保有しているのはキサラギだった。あの時に、街のど真ん中にはACがいたんだ。その時にはまだ私はレイヴンがどんなヤツラなのか知らなかった」
 ハンナが一呼吸した。ロッフが唇を噛んでいる。
「そのACが毒ガスを撒いたわけではないらしい。なんでも、先客のレイヴンがその場にはいたらしいな。それを止める為に私が見たACが派遣されたらしい。
 レイヴンを止められるのはレイヴンだけだ」
 死ぬような思いをした筈なのに、随分とあっさりと纏められてしまった。簡単に話せてしまうような事実に殺されかけたのだと言う事は、感慨に値するのだろうな、と思う。
 彼女は嘆息を付いた。
「私は話したぞ、次はお前が話せ」


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