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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

19なごみ(753) ◆nfj/oZUsU2:2006/08/23(水) 21:37:34
 レイヴンは嫌われてはいても、一方でアリーナという娯楽の興行を担ってきた存在でもある。引き入れようとも、アライアンスの領民にさほどの嫌悪は抱かれない。

 だが、これが野盗崩れであれば、戦術部隊はあっという間に瓦解する。
 領民にあからさまに害を為す者を引き入れれば、反対活動が起きかねない。そうなれば上層部にいい顔をされていない戦術部隊は、即時解体されてもおかしくない。

 情報を封鎖しようにも、ACという目立つ兵器を大量に保有する戦術部隊の存在を隠し通す事は出来ない。
 故に、野盗の類を討伐し、同時に腕を持て余し、食うにも困り始めたレイヴンを引き入れる為の土壌として世界に喧伝しなければならないのだ。
 アライアンスが勝利しようとも、戦術部隊が生き残らなければ隊員に待っているのは破滅だけ。戦後も生き残る為の確かな地位の確立を、戦術部隊は必要としている。

 副官という立場に推挙される以上、トロットは愚鈍ではない。その程度の戦術的判断は行える。
 だからこそ、彼はクォモクォモの侮蔑に対し沈黙を保った。事実、彼の実力はクォモクォモに劣るものだという自覚もあった。

『……状況はどうだ』

 両者のスピーカーから、隊長を仰ぐ男の声が響き渡る。
 エヴァンジェ。AC操縦技術、指揮能力の高さを評価されるアライアンス戦術部隊一の傑物である。
 アライアンス戦術部隊の立案を行い、上層部の一部を抱き込んだ手腕からも、その才覚は窺える。

 故に、隊員達の信頼は揺らがない。人間性などというもの置き去りにした荒野において、実力以上に評価するものはないからだ。
 指揮官として突出した実力を持つエヴァンジェを隊長を仰ぐのは、ある意味当然の話だった。

『盗賊の全滅を確認、また、クォモクォモの活躍によりACの撃破も完了しました』

 トロットは、一歩引いた視線で戦場の推移を報告する。
 好悪の感情で報告を違えるような真似はしない。ましてや、他人の成果を自身のものにしようとも思わない。
 そのレイヴンとしては異質の性格故に、彼はナービス領で低迷し、今この部隊の副官として活躍している。

『そうか。戦術部隊の初陣としては上々だな』
『これで実力を示せた、という事か』

 クォモクォモは、あえて誰の実力とは口にしない。自分達の実力、などという言葉でお茶を濁さないその姿勢は、彼自身の実力に対する自負の表れでもある。
 無論、エヴァンジェもそれは理解している。だが、責める事はしない。

『だが、奴らを納得させるには、まだまだ成果が足りん。戦術部隊の本格的な独立の為にも、君たちには粉骨砕身して貰いたい』
『隊長。しかしこんな盗賊狩りばかりでは埒があきませんよ」

 トロットの諫言に、エヴァンジェはクッ、と喉を鳴らす。顔に浮かぶ感情は、笑みのそれに似ていた。

『分かっているとも……。トロット、クォモクォモ……コンコード市を知っているか?』

 ――――彼らはアライアンス戦術部隊。
 所属するレイヴンは四人。エヴァンジェ、トロット・S・スパー、フラージル、モリ・カドル。
 アライアンスの保有する五人のレイヴンの内、四人をも保有する部隊。
 そして、クォモクォモという外来を半ば引き込み、五機のACを保有する事になった最大戦力。

 企業の中にありながら、心根から従おうとはしない鴉の群れが、ゆっくりと頭角を現し始めた。


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