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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

187シャイアン ◆sjPepK8Mso:2007/02/12(月) 23:43:17

 ※

 ACのOSには、間接電源カットの過程にバグがあるらしい。足の間接が過電圧で焼き切れた場合、予備回線に移る前にOSの電源が一辺落ちる。だから、脚に攻撃を喰らった場合には、OSからコントロールを奪って、手動で電圧調整をする必要がある。
 正直、そんな話は耳タコだった。余分に取った座学講義をがらがらのテーブルに陣取って右耳から左耳へ。
 講義が終わった時にはもう外は真っ暗になっていたが、三十分程度の散歩ならしてもバカにもならんだろうと思って、外出許可を取った。頭の中のおぼろげな地図を頼りに、何とか公園に辿り着いて、ベンチに座って目を瞑った。一分だけのつもりだ。余分に寝るつもりは無い。

 毒ガスというやつは実に手に負えない代物である。
 この世の生きとし生けるものが必要とする、呼吸という行為を逆手にとった至極面倒な兵器が毒ガスだ。
 その毒ガスにもピンからキリまであって、大昔も大昔、文献の端っこにしか確認できないペロポネソス戦争でスパルタ軍が使ったという亜硫酸ガスから、イープル戦線ドイツ軍の塩素ガスから昨今ではキサラギの腐食ガスがある。腐食ガスは企業秘密だからして一般人は知らないはずだが、数年前に都市部で起ったテロの時にゴシップ誌がどこから情報を盗んできた。以来まことしやかに噂されている。
 腐食ガス程でなくても、塩素を町中に満たすだけで人間ぐらいは皆殺しに出来るのだ。要は、呼吸できなくすればいいのだから。
 それを大それたことを実行する人間は今日日依頼を受けたレイヴンくらいのものだ。
 人間が、まだサイレントラインの存在も知らない頃に潰し合いを始めた時の、一撃目のパンチが、今フォークロアを覆う塩素ガスだ。
 後日、毒ガスの使用を人類間で規制する「フォークロア協定」立案のきっかけとなるこの事件の死傷者は数えきることが出来ない。生き残った人間は、何万分の一課の幸運の持ち主に違いない。
 ハンナがその幸運の持ち主である。まだ、今の所は。
 ハンナは学校側の意向で、密閉室でテストを受けるクラスの一員だった。相当なスパルタ教育が社会問題として取り上げられる事が多い学校で、今回も行き過ぎで頭の悪い教育の一環だった。生徒数人を部屋に閉じ込めて一体何をするつもりか。
 結局の所、それが幸運だったのだ。警報が鳴り、密室からでる事を禁じられたハンナは、すでに塩素ガス濃度が薄まった頃に外に出た。部屋から出て家路についた。軽度の二酸化炭素中毒ならば、まだ救いようは有る。その上に多少の塩素中毒が重なったとしても、だ。記憶障害の一つも起るかもしれないが、命の重さに比べたら軽いものだろう。


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