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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

173AC4SSその28:2007/02/04(日) 22:09:45
『はい』
「ルーシュ、私よ」
 一緒に旅行に来ていた、ハイスクール来の友人はひどく驚いたようだった。
『フィオナっ?』
 たった一日――あるいはそれ以上かも知れないが――聞かなかっただけなのに、その声は妙に懐かしく聞こえた。
「そう。私」
『誘拐されたんじゃ……』
「それはもう終わったの」
 不思議なほど冷めた声が出てきた。
「ルーシュ、お願いがあるの。あなたの口から、この電話を現地の警察に知らせて。
そうすれば多分信用して動いてくれる。かけ直してきてもいいわ。
それとも……そっちでも、こっちがどうなったかはニュースになってる?」
『……え?』
「いえ、いいわ」
 そう言い、逃げるように電話を切ろうとした。
 そこを、心配そうな声が遮った。
『ひょっとして、もう大丈夫なの? 助かったの?』
「……うん」
『よかった……』
 その柔らかな声が、疲れた体に染みわたっていく。
 チクリと胸が痛んだ。だが、不思議と微笑が浮かんだ。
「うん、ありがとう」
 そう言って電話を切ろうとした。
 が、フィオナはそこで奇妙なことに気づいた。
 奥へ追いやった、レイヴンの体。その肩が――今上下しなかったか?
『フィオナ?』
 フィオナは応えなかった。
 ただじっと、何かを見定めるように、レイヴンを見つめている。
『……ねぇ』
 そこで、ようやく我に返った。
『どうしたの? 何かあった?』
「別に、そういうわけじゃないんだけど……」
 フィオナは口を濁した。
 否定したくとも否定しきれない。
 彼女は、この男を助けるよう動くべきか、それとも死を与えてやるべきか、本気で迷ったのだ。
 先程の戦いや、その前に見せた燃えるような目つき。
 彼は、この薄闇の中で息絶えるべきではないのか。
「ルーシュ、あのね……」
 だが、フィオナに実行するだけの義理も、勇気もなかった。
 結局彼女は、この場に重度のコジマ汚染患者がいることを、離れた友人に告げ、携帯を閉じる。
 遠くで、鳥が鳴いていた。


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