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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

172AC4SSその27:2007/02/04(日) 22:08:44
 ノーマルの残骸だった。両腕は千切れ、残っているのはボロ切れのような装甲だけだ。
 フィオナは太陽の熱で我に返った。
(他に、助かった人は……)
 辺りを見回したが、誰もいなかった。
 もしや生き埋めを免れたのは自分だけか、とも思ったが、きっちりと部屋の形を残している区画も散見された。
 どうやら爆心地から離れた所は、倒壊を免れているらしい。
 改めて見ると、フィオナがいた場所はそれの一つのようだった。
 とすれば――他に誰かいてもいいように思える。
(……まずいかしら)
 フィオナは眉をひそめた。
 この場合の誰かとは、高角率でテロリストだからだ。
 加えて――爆発の規模が規模だ、コジマ粒子の大部分は破壊で消費されてしまっただろうが、それでもやはり周囲の汚染も心配だ。
 そういえば、他の人質達はどうしたのだろう。
 ネクスト以外の敵部隊は、姿が見えないが――撤収してしまったのだろうか。戻ってはこないだろうか。
 考えれば考えるほど、そうやって懸案事項が噴出した。どれから手をつけていいのか分からないほどだ。
 だから、だろうか。
 最終的に、彼女は正直な願望を実行していた。
 太陽に焼かれながら、真っ直ぐノーマルの残骸へと向かい、装甲の梯子をよじ登る。
 そして、躊躇うことなくコクピットハッチを開けた。
 中は暗かった。
 その陰の中で、男が一人、俯き気味に座っている。
 あのレイヴンだ。死んでいるのか、眠っているのかも判然としない。
「レイヴン」
 呼びかけたが、反応はなかった。
 生死が気にはなったが、それ以上にやるべきことがあった。
 フィオナは、男のポケットを探る。
 罪悪感がなかった。『そんなことより』、と本気で思っていた。
 無線機。ライト。携帯食料。
 次々と遺品が出てくる。それらに混じって――思った通りだ――携帯電話が出てきた。
 フィオナはその携帯電話に番号を打ち込んだ。祈りながら待つこと数秒、携帯電話が呼び出しを開始する。
 相手はすぐに出た。


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