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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

171AC4SSその26:2007/02/04(日) 22:07:19
 どうやらネクストに爆発物が仕掛けられていたらしい。
 証拠隠滅としては最も手軽で、確実な手段だ。
 もっとも、本来ならば機体だけをばらばらにする程度の威力なのだろう。
 だが、今は周辺にコジマ粒子が満ちていた。爆発はその粒子と逐一反応し、凄まじい威力を発揮したようだ。
(だめだな)
 愛機の中で、レイヴンはそう判断した。
 体が動かない。全身の感覚が遠い。爆発で装甲が歪み、コジマ粒子がコクピットに侵入してきたのだ。
 汚染は皮膚全域に及んでいる。恐らくあと少しもすれば、それは芯にまで達し、自分の体は活動を停止するだろう。
 ゲームオーバーだ。
(年貢の納め時か……)
 実りは要らない。
 欲しかったのは充実だ。
 だから、彼は戦場に赴き、自らの命を燃焼させた。その時の光は、確かに彼にこびりついた『やるせなさ』を、振り払ってくれたように思う。
 だが、それももう終わりだった。
 それについては、怒りも、悲壮感も沸かない。
 あるとすれば――少しばかりの、疲労感だ。
(やれやれ)
 レイヴンは目を閉じ、永久の休息に向かった。


     *


 フィオナは、全身の痛みで目を覚ました。
 だが起きあがりたくなかった。ひどく眠い。疲れた体に、このまどろみは心地よすぎるらしかった。
(もう少し、だけ……)
 どうせ大学もないのだから。
 そう思ったところで、意識が一気に覚醒した。
 人質。ネクスト。爆発。大学どころではない。帰れないかもしれない。
 思考に蹴りが入った。
「そうだ」
 反射的に身を起こしていた。
 が、そこで面食らった。
 目を開けたはずなのに、周囲は真っ暗だったからだ。周りの様子はおろか、自分の手さえ見えない。
 洞窟の中のような完璧な暗闇だ。
 しばらく経って、真後ろに微かな光源を見つけなければ、きっと死んだと誤解していただろう。
(……建物が、崩れたのかしら)
 空恐ろしい考えを抱きつつ、フィオナはその光源を目指して歩いた。
 しばらく進むと、光が瓦礫の隙間から差し込む陽光だと分かった。
 さらに進むと、その隙間が人間一人くらいなら通れそうなものだと分かる。
 フィオナはその隙間を這い進み、一分ほどで外へ出た。
 暑かった。
 空は澄み渡り、太陽が高い。立っているだけで、じりじりと肌が焦げていくような感じがする。
 だが施設の惨状を目の当たりにしたとき、一斉に汗が引いた。
「……なに……これ」
 声が漏れる。
 そこにあったのは瓦礫だけだった。瓦礫が一面に敷き詰められ、大きな広場を成していた。
 その中央に、巨大な影が立っている。


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