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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

166AC4SSその21:2007/02/04(日) 22:04:31
(……いっそ、ここで暴れてやるか)
 名案に思えた。
 ECMのおかげで、敵の位置は分からない。だが、ここで暴れれば、慌てて飛んでくるだろう。なにせ、この場所には――猛毒のコジマ粒子がある。
 もっとも、評価の手前、タンクを破壊するわけにはいかない。だが敵にそんなことは分かるまい。きっと驚く。
 グランツは上唇を舐めた。
 適当なノーマルに狙いを定める。トリガーに指がかかる。
 格納庫の扉が、音を立てて閉まり始めたのはその時だった。
「なんだっ」
 言う合間にも、巨大なシャッターが次々と閉じられていく。
 まるで、獲物を取り込むかのように。
 グランツは言い知れない焦りに見舞われた。だが、もはや逃げるには遅すぎた。
 ズン、と重苦しい音を立てて、最後の防壁が閉じられる。
 グランツは愛機と共に、巨大な空間に閉じこめられてしまった。
(……どういうつもりだ?)
 その意味は、すぐに分かった。
 直後、照明が全て消えた。墨を垂らしたような、容赦のない暗闇が押し寄せる。
 暗視機能を持たないネクストにとっては、まさに己の腕さえ見えない状態だ。もちろん、敵の視認などできようはずもない。
 ネクストの操作系の根本を為すACSは、人間の五感の延長であり――それ故、人体の機能を大きく逸脱した能力は、持つことができないのだ。脳への負荷が甚大なことになる。
 そして人間の目に、『赤外線で闇夜を見通す』という能力はなかった。
(……これは、なかなか考えたな)
 グランツは、軽く驚いた。
 暗視スコープがない、というネクストがノーマルに劣る点を、敵が知っていたのは本気で意外だった。
 だが同時に、せせら笑ってもいた。
 敵はこの機会に闇討ちをするつもりだろうが――ACSは、そんなヤワなシステムではない。
 『赤外線スコープ』といった、人間に元々ない能力を付加することは難しいが――既にある能力を、強化することは可能なのである。
 この場合、機械を通して『光への感度』を上げてやればいい。
 グランツがそう命じると、数秒ほどで格納庫内の様子が、おぼろに浮かび上がってきた。テレビの『明度』を調節する要領だ。
 陰湿な笑みが浮かぶ。
(ざまあみやがれ)
 圧倒的なテクノロジー。これが、ネクストの持つ強さだった。
 グランツはその力で、ノーマルを返り討ちするべくスティックを握りしめたが――考え違いをしていたのは、彼の方だった。


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