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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

165AC4SSその20:2007/02/04(日) 22:04:06
 今となっては知る術もない。ただ一つ確かなことがあるとすれば――
「……その角を、右へ」
 カメラが、要塞の通路を素早く曲がるノーマルの姿を捉えた。
 そのノーマルは曲がる直前に、素早く反転、右手のライフルでネクスト牽制。その後吸着地雷をばらまいて通路を塞ぐ。
 ネクストはOBで地雷原を突っ切ろうとした。試みとしては正しい。現に通過は一瞬であり、ネクストにダメージが入ったようにも見えなかった。
 だが、通路に爆風が満ちた。即席の目眩ましだ。
 ECMでレーダーが利かない状態では、効果は抜群だろう。ネクストは光学ロックであるから、ロックオンによる索敵もできない。
 その隙に、レイヴンは十分な距離を稼いでいる。
(――いい腕だわ。すごく)
 思っていると、横からテロリストが報告した。
「……やはり、聞かれてるな」
「聞かれてる?」
「通信傍受だ。暗号化してるが、それも突破されてるかもしれない。
次からもギリシャ語で頼むぞ」
 フィオナは一応頷いた。
 目的地は近い。これ以上の指示が――それも、自分ごときの道案内が必要とも思えなかったが。


     *


「畜生め」
 グランツは悪態をついた。
 要塞に突入してから、鬼ごっこをすること数分。状況は――まさかだが――膠着していると判断せざるをえなかった。
 彼のネクストは、機動力重視の構成だ。加えて、主武装のショットガンは近距離で絶大な攻撃力を発揮する。
 だからグランツは、速度差でノーマルを追いつめ、ショットガンでずたずたにする、ぐらいに考えていた。
 だが――施設は予想以上に複雑な構造をしていた。
 曲がり角が多く、射線が通らない。敵はそれを利用して巧みに銃撃を避け、ばかりか折りを見て反撃、極小だがダメージを負わせてくる。
 苛つくやり方だった。
 それでも敵の動きが分かれば、もう少しスマートにいけたのだろうが――こちらも巧くはいっていない。
 無線を傍受し、相手の動きを読もうにも、どうも向こう側はグランツの知らない言語で応答しているらしいのだ。
 グランツは英語、中国語、ロシア語、ペルシャ語を理解することができ、現地のテロリストの会話ぐらいなら――ペルシャ語のはずだ――聞き取れると踏んでいたのだが。
 これも予想外である。
 勿論グランツは、レイヴンとそのオペレーターが交わしている言語が、今や地方都市アナトリアでしか使われていない言語――『ギリシャ語』であることを知らない。
「報告書どころじゃねぇぞ……」
 呟いたとき、遠くの角を黒い影が横切った。
 反射的にブーストダッシュしていた。
 瞬時に距離を詰め、同じ角を曲がる。通路の先では、巨大なシャッターが口を開けていた。
 グランツは迷わず飛び込んだ。時間がなかったのだ。
 だが――飛び込んだ部屋にも、目標の姿はなかった。はずれである。
 焦りと苛立ちが膨れあがった。
(ダメージは与えてる。後一押しなんだ、後一押し……!)
 グランツはそう自分に言い聞かせ、苦労して感情を飲み込んだ。
 重いため息を落として、ショットガンの弾倉を交換、改めて周辺を警戒する。
 と、そこでようやく、グランツはこの部屋が格納庫であることに気がついた。
 未起動のノーマルが幾つか、壁面の作業台に乗っている。実戦運用されているのだろう、どれも真新しい傷を負っていた。
 壁際には、コジマ粒子入りのタンクも見える。
 恐らく、マグリブ解放戦のリンクスは、こういう場所でネクストの補給を受けているのだろう。


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