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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

164AC4SSその19:2007/02/04(日) 22:02:41
 レイヴンは二つのタイプに大別される。
 新しいタイプと、旧いタイプ。
 もっと言うなら、企業によって養成されたものと、そうでないものだ。
 かつて政府があった頃は、後者が大半だった。だが今となっては、後者はほとんど死に絶えている。戦場に立っているほとんどは、前者――養殖されたレイヴン達だ。
 理由は簡単だった。
 後者の時代――つまり、まだ国家が繁栄していた時代には、レイヴンになるのは至難の業だった。
 操作はまだ簡略化されておらず、搭乗者には並々ならぬ身体能力と、センスが要求された。
 また国家や宗教を全て捨て去り、一個の暴力装置になるということへの覚悟も要求される。
 そういうハードルを承知してさえ、わざわざAC乗りに志願してくるような連中だ。
 戦闘狂、快楽殺人者――とにかく、壊れた手合いが多い。
 そういう連中は国家解体戦争に率先して参加、勝手にばたばたと死んでいった。
 最後まで生き残っていたのは、比較的まっとうな感性を持つレイヴン――すなわち企業に養成された、『職業軍人』としてのレイヴンである。
 だが――そんな中に、時たまイレギュラーが現れる。
 誰よりも多くの戦場に飛び込んでおきながら、天才的なセンスと、冴えすぎる頭で、生き残ってしまう者がいる。
 フィオナは頭の片隅で、そんな内容の講義を思い出していた。
(……じゃあ)
 彼はどうなのだろう。
 レイヴンと『ギリシャ語で』連絡を取りながら、フィオナはぼんやりと思考した。
 先程話したときの、あの空っぽな口調と、炎のような瞳。
 あれはまさしく、どこかで壊れてしまった人間のそれではないだろうか。
 彼はひょっとすれば――年齢からは想像もできないほど、長く戦場に居座っているのではないだろうか。
(……いいか)
 が、フィオナは結局考えるのをやめた。


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