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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

160AC4SSその15:2007/02/04(日) 22:00:46
「ひどい……」
 司令室の大モニターが映す、そういった悲惨な戦況。
 手錠を外され、そこのオペレータ用の席に座らされているフィオナだが――状況も忘れて、息を呑んでいた。
「これじゃ、いくら何でも……」
「彼らの心配はするな。我々は覚悟を決めたんだ」
 後ろのテロリストは、冷然と告げる。
 だが、それでフィオナの動揺が納まるはずもなかった。どう言い繕ったところで――今モニターの中でなぎ倒されているモノ、その中には残らず人間が入っているのだ。
(これじゃあ、虐殺……)
 手が震えた。
 そんなフィオナに、テロリストは嘆息したようだった。
「しっかりしてくれ。遺憾なことだが……最悪を想定した時、オペレーターとして機能するのはあんただけなんだ。働いて貰うぞ、アナトリア人」
「でも……」
「同情はやめろ。でなければ……」
 丁度その時、MTがネクストに引き倒された。
 ネクストのショットガンが、さらけ出された胸部を――コクピット部分を狙う。
「あんたも俺も、彼らの所へ行く」
 鈍い発砲音が轟いた。
 MTの胴体が粉々になる。衝撃で手足が跳ね上がり、大きく波打つようだったが、やがて静かになった。
 ネクストのラインアイが、その光景を陶然と眺めている。
 フィオナはどういうわけか――その『目』に意識を吸い取られるような心地がした。
(……死ぬ……?)
 すぅっと意識に靄《もや》がかかった。
 考えるな、そういうものなんだ、といういやにすっきりした『納得』が――誘拐された当初にも感じた、納得が遅れてやってくる。
「そう、ね……」
 この世の最も冷たい部分。日常をあざ笑う、悪魔的なユーモア。
 それらが放つ、圧倒的な説得力に、たかだか二十歳の小娘の現実感など容易く屈服してしまった。
 後に残るのは、かつてのような浮遊感、無関心――それに伴う平静さだ。
「それでいい」
 テロリストの声も、まるでガラス越しに聞こえてくるかのようだ。
「よろしく頼むぞ」
 フィオナは頷きを返した。
 それから、全細胞に緊張を命じる。


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