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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

158AC4SSその13:2007/02/04(日) 21:59:35
 二分が過ぎた。
 それはやがて五分になり、ついには十分となった。
『……軍曹』
 部下の一人が呼びかけた。
 グランツは唇を引き結び、無視することに務めた。
(何故出てこない……!)
 焦りが心中に渦巻く。
 だが意に反して、モニターに映る要塞から、駆動兵器が出てくる兆しはなかった。
 夕陽に照らされた城塞は、我関せずといった風情で、今も飄然と佇んでいる。
『……いいかげん、攻撃しましょうよ』
「黙れ」
 鋭く命じ、グランツはモニターを睨め付けた。
 そのままさらに三分が過ぎた。
 知らず、言葉が漏れる。
「畜生め……」
 誤算だ。
 当初の話では、もっとスムーズに行くはずだった。
 MT達を蹴散らすことで、自らの履歴書を彩るだけの、ただそれだけの依頼だったのだ。
(やはり、『誘拐』がでかかったか)
 もっとも、予定に変更はなかった。
 動くだけで環境を汚染し、ガレージから出すだけで膨大な金額を食いつぶす――ネクストはそういう兵器なのだ。
 そして、誘拐が起こったのはネクストが現地に到着した後である。
 今更予定を変更すれば、ネクストの移動にかかった全ての経費は無駄になってしまうのだ。
 レイレナードはそれを許さなかった。
 だがかといって、全く何も影響なし、というわけではない。
 過程はどうあれ、人質を見殺しにしたことには変わりないのだ。ならば素晴らしい戦果を挙げなければ、『上』は納得しないだろう。
 戦闘の長期化、それによる施設損壊や環境汚染など論外である。
(……それを考えると、こうして待っていることもまずい)
 グランツとて、それは分かっていた。
 だが、わざわざ敵の準備を待つのにも、切実な理由がある。
 欲しいのは軍功だ。
 ネクストのポテンシャルを出し切った、そういう報告書を書きたい。
 そうすれば、本社もこんな寄せ集めのパーツで構成された機体ではなく、正規のものを自分に貸与する気になるだろう。
 その時の恩恵はでかい。
 リスクを負う価値はあると踏み、わざわざ敵の準備を待った。
 だが――そもそも出てこないのでは話にならない。
「頭でも腐ってやがるのか」


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