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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

157AC4SSその12:2007/02/04(日) 21:59:08
「それで、その分析を戦闘中に教えられるのか? それではだめだろう。
全員が作戦を理解して、準備して、でないと罠はまともに機能しない。泥縄の戦略じゃ、ないのと同じだよ。特にネクスト相手にはな」
「……だがな、敵は目の前だぞっ。そんな時間は……」
「分からないぞ」
 レイヴンは平然としていた。
「相手が本気なら、今頃勝負はついてる。
スナイパーキャノンが飛んできたんだろう? もろに射程内じゃないか。
だが、生きている。相手は何らかの理由で、こっちの出方を待っているんだ。
わざわざこんなことをしている以上、ほんの少しなら――雑把な戦術を立てるぐらいまでなら、慎重でいてくれるかもな」
 一理ある見立てだった。
 しかし、そこには大事なものが足りない。
 フィオナは恐る恐る尋ねた。
「……それ、確証は?」
 レイヴンは即答した。
「ない……確率とは一割あればいい方かもな。
普通に警戒しているだけかもしれないし。あるいは、途中で痺れを切らすかも知れない」
 テロリスト達が眉をつり上げた。
 分かりやすく一歩前に出る者までいる。
 あまりの殺気に、フィオナは最初の戦死者はここで出るのではないか、とさえ思った。
(……まずい)
 いい加減、テロリスト達の我慢が限界だ。そろそろ伏せるべきだろうか。
 本気でそう思った頃、レイヴンの声がした。
「落ち着け。少なくとも、普通に出るだけじゃ駄目だ。
入念な作戦が要る。確証なんて贅沢言うな、生き残るなら、多少ギャンブルでもそっちに賭けるしかないだろう」
 少なくとも、レイヴンの声には気負いや迷いはなかった。
 彼にしてみれば、当たり前のことを、当たり前に口にしているだけなのだろう。
 だが、テロリスト達は認めなかった。
「御託を並べるんじゃない!」
 鋭い声が、部屋を一閃した。
「お前はレイヴンだろ! 一々雇い主の決定に……」
 言葉は尻窄みに消えていった。
 まるで、話す先から自信を吸い取られていくかのように。
「……待ってくれ」
 ぞくりとした。
 慌ててレイヴンへ向き直る。
 石ころを見るような、白けた表情がそこにあった。
「何か勘違いしてないか」
 テロリストは、何も答えなかった。いや、応えられないのかもしれない。
 代わりにフィオナが応じた。
「……勘違い?」
「こうなったら、もう撃って出て最期まで戦い抜く。そういう覚悟は立派だとは思うが……あなた、適材適所って知ってるか?」
 レイヴンが口元を歪める。
 だが目は笑っていない。今までで一番棘のある笑い方だった。
「目を覚ませ。まだそんな段階じゃないだろ。
まずはぎりぎりまで考える。そしてそれでもだめなら……そこで初めて突撃だ。
だがあんた達は、恐怖に負けて楽な道を選ぼうとしているように見える」
 沈黙が降りた。
 だがそれは肯定しているも同然だった。
「……命が賭かるんだ。せめて建設的にやろう」
 言いながら、レイヴンは灰皿で煙草の火を押しつぶした。

 結局、彼の意見が採用された。


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