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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」
156
:
AC4SSその11
:2007/02/04(日) 21:58:20
正直、フィオナもこの辺りは奇妙に思っていたのだ。立場上政治にも明るいので、尚更に。
だが――
(犯行声明の……捏造っ?)
ここまでとは想像もしなかった。
それはテロリスト達も同じらしい。さすがに浮き足だってはいないが――どの顔にも、深刻な当惑と焦りが浮かんでいる。
「レイヴン! 早く格納庫へ行け!」
「見張りのお前も来いっ、MTが余ってるっ」
「人質は?」
「縛っとけっ。今すぐ出るぞ! 意地を見せろ!」
そういった騒ぎを前に、レイヴンが口を開いた。
「……待て」
湖水のような声が、部屋中に染みわたった。
白熱しつつあった議論は、波が引くように静まる。
レイヴンは続けた。
「落ち着け。慌てて出撃しても、何にもならないぞ」
「呑気なことを――」
「じゃあいいぞ。お前、ノーマルにでも乗って突撃してみるか」
レイヴンは、男達を冷然と見上げた。
「格納庫へ行くのはいい。だがすぐに出撃するってのは反対だ。相手はネクストだ、ただ出撃するだけじゃ、結果は何も変わらない」
的確な指摘に、テロリスト達が口を閉ざした。だが納得していないのは、引き結ばれた口元を見れば明らかだ。
「……では、どうするつもりだ。交渉でも持ちかけるつもりか」
たっぷりと沈黙を置いて、一人が剣呑な声を出した。
空気がピンと張りつめ、全員の視線はレイヴンに向かう。
「さてな」
レイヴンは、背もたれへ体を預けた。
ポケットから煙草を取りだし、ライターで火を点ける。
二、三度煙をくゆらせてから、ようやく話を始めた。
「交渉の余地なし、てのには同意だ。ガレージから出してまともな機動させるだけで、億単位の金が動くバケモノだ。
あっちから攻撃してきた以上、半端な真似はしないだろう。念のため聞くが、降伏という選択肢は?」
「ない。戦うだけだ」
一人が言うと、残りもはっきりと追従した。
レイヴンの口元が、笑みの形に歪んだ。
「……じゃあ、必要なのは議論だ。格納庫に行く前に、全員集まって作戦会議をしよう」
「……情報関係は、すでに情報部がやっている」
レイヴンはせせら笑った。
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