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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」
154
:
AC4SSその9
:2007/02/04(日) 21:57:21
「書類上の問題だ。俺は一騎当千の実力を見せなければならない。そういう報告書を書かなければ、いつまで経っても正規へ昇格できないからだ。
お前は、俺の出世をさらに半年遅らせるつもりか」
要は、自分が活躍しないと恰好がつかないということだった。
通信の向こうで、呆れたような声が漏れる。
『……そのために、わざわざ敵の準備を待つのですか?』
「安心しろ、出るのは俺だけでいい。おまえ達に危険はない」
『……軍曹、不用意なリスクは……』
副長の言葉にも、男は鼻を鳴らしただけだった。
「リスク? 何の話だ」
男は自信たっぷりに続けた。
「副長、俺が何だか言ってみろ」
『……グランツ・カウフマン軍曹です』
「違う」
男――グランツの言葉に、副長は渋々従った。
『……ネクスト乗りです』
「リンクスと呼べ。いいから待つぞ。俺を信じろ」
グランツは機体のPAを維持させつつ、正面のモニターを見つめた。
数キロ離れたところで、石造りの城塞が、夕陽に赤く照らされていた。
*
「ネクスト?」
フィオナは声をあげた。
「ネクストって……あの?」
「PAを纏い、常識外の機動をし、圧倒的な火力を誇る、そのネクストだろうな」
レイヴンは腕を組んで、険しい顔をしていた。
先程とは打って変わったその態度が、危機を雄弁に物語っている。
「どうして……? 攻撃してきたんでしょ?」
フィオナは椅子から立ち、窓へ近づこうとした。
そこに太い腕が伸びる。
見張りのテロリストだった。
「椅子へ戻れ、女」
がっしりと肩を掴まれ、フィオナは息を詰まらせた。
「自分の立場を忘れるな。行動の自由は、あくまでこちらに不利益がない場合に限る。
そういうルールだったが、もう忘れたか」
フィオナは一瞬迷ったが、背後に撃鉄が起きる音を聞くと、やむなく椅子へ戻った。
見張りの視線が外れるのを待ってから、そっと唇を噛む。
(どういうこと……?)
何故攻撃されるのか。
現地の人々が人質にとられているというのに、いったいどこの誰が攻撃命令を出したのだろう。
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