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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

153AC4SSその8:2007/02/04(日) 21:56:43
「俺はな」
 レイヴンは、ぼそりと呟いた。
「そういうの全然分からなくなった」
 背筋に冷たいものが走った。
 だがそれでも、フィオナはレイヴンの瞳から目を逸らさなかった。
 彼の灰色の目の中では、どす黒い炎が猛然と燃焼している。
 全てを燃やし尽くし、後には何も残さないであろう炎だ。
「貴重な財産だ。大事にしたまえよ」
 フィオナは、おずおずと頷いた。
 頷くしか、できなかった。
 レイヴンは薄く笑って、灰皿で煙草の火をもみ消した。
 甲高いコール音がしたのは、その時だ。
「面倒だな。……誰だ?」
 レイヴンは、懐から無線機を出して、大儀そうに耳へ当てる。
 そのまましばらく、相手の話へ聞き入っているようだったが、
「……何?」
 ある時、剣呑に目を細めた。
「ネクスト? 何を言って――」
 雷が落ちたような轟音が、言葉の続きを塗りつぶした。


     *


『軍曹殿、初弾は命中しました』
『スナイパーキャノンの調子は万全です。いつでもいけます』
 部下からの報告を聞き、男は満足げに頷いた。
「上出来だ。だが次弾以降の発砲は禁止する」
『……今なら一斉射撃で施設を掃滅できますが』
 スピーカーからの声に、男は不快そうな顔をした。
 小馬鹿にしたため息を吐くと、通信対象を『全軍』から『副長機』へ変更する。
「それでもだ、副長」
 コクピットの中で、男は傲然と言い放った。
「考えてもみろ。相手の準備が整う前に、弾を降らせて終わらせる。しかも敵はノーマルばかり」
『……それが何か?』


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