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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

106エヴァンジェSSその25:2006/10/29(日) 23:16:03
『……答の二つ目だ。
お前や私でも、チェスの世界王者に勝てる方法がある。知っているか?』
 チーフが圧倒されていると、ふと質問を投げかけられた。
 知らない、と応じると、ACはデタラメなことを言った。
『勝負を殴り合いに持ち込め』
「……なんだって?」
『チェスの世界王者と、チェスをやって勝てるはずがないだろう。
いいか、戦場は生死がかかっている。どうして、相手の得意分野で勝負してやらなければならんのだ。
相手が強い場合は、その実力が発揮されない状況に引きずり込め。
機動力が高い相手には、機動力を殺してから勝負に行け。火力が高いやつとは撃ち合うな。
これがレイヴンの判断だ、覚えておけ』
 この言葉も、チーフの胸を深く剔った。
 まさしく、彼の娘達はこの方法でやられていた。
 本領を発揮したのは、タンクぐらいだ。後は、その実力を発揮する直前で撃破されてしまっている。
 敵は環境を利用して、AC達の力を封じ込めた。だから勝てた。
 『技術』が通用しなかったのではない。『技術』が、全く発揮されなかったのだ。
「……なるほど」
 チーフが、床にへたりこんだ。
 蓋を開けてみれば、当たり前――とまではいかないまでも、簡単なことだったのだ。
 戦術の基礎の基礎、一番最初の習う内容だ。
 それがよほどショックだったのだろう、チーフはしばらく口も聞けない様子だった。
 その沈黙は一分にも及んだ。
 ACが苛立って見えた頃、
「……すっかり、忘れていたようだ」
 チーフが呟いた。
 何気ない言葉だった。
 だがACは、そこに何かを感じ取ったようだった。
 若干の警戒を滲ませ、
『……何だと?』
「愉しくて、な。少しやりすぎた」
 白衣に包まれた小柄な体から、異質な何かが陽炎のように立ち昇った。
 歪みきった笑みを湛えつつ、チーフがゆっくりと身を起こす。
 ACが驚いたように身を揺らした。
 一方チーフは、ふっきれた口調で、
「作り上げた技術を、思考ルーチンを、ACに放り込んでいくのは。
パズルと宝探しを合わせたような、もの凄い面白さだったよ……」


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