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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

105エヴァンジェSSその24:2006/10/29(日) 23:15:29
『勘違いも甚だしいのだ、お前達のやり方は。ロジックだけで戦闘を計るなど――コンパスだけで体積を計算するようなものだ』
 相手の言葉は、あまりにも簡略化されていて、それだけでは大体の意味しか受け取れない。
 だがそれでも、チーフは反射的に身を固くした。
 相手の言葉が真実を射抜いていると、直感的に分かったのだ。
 それは薄暗い研究室で、理論を頼りに機体を組んでいた彼らとは違う――日常的に戦場を行き、飯を食うように人を殺してきた、百戦錬磨のプロの言葉だ。
 ACは続けた。
『……チェスではないのだ、戦闘は。
泥臭いところもある。不必要と思われていた機能が、突発的に活きることもある。確率と演算を超えて、敵心理の裏の裏の裏を掻くぐらいで丁度いい。
システマティックに、「必要な」ものだけ積もう、という発想がそもそも間違っている。
不要も必要も、レイヴン一人のさじ加減だ。
何より……』
 ACは吐き捨てるように言った。
『戦闘をして、分かった。
おまえ達の機体は、「環境」に無頓着だ。おまえ達のくだらなすぎる敗因は、全てここにある』
 環境は、武器にもなる。
 チーフは、このACが電気コードを使用したり、タンクを水門の果てに追いやったことを思い出した。
『だから、チェスと言ったんだ』
 途端、チーフの聡明な脳に、理解の火花が弾けた。
 彼らが組んだAIは、標準的な環境の中、標準的なルール――作戦目標――の中で闘うことを前提としていた。
 それが、あらゆる状況で安定して効力を発揮する、『万能』な設定だと思われたのだ。
 だが実戦では、環境は――盤面はその都度に違う。ルールも違う。駒も違う。
 標準環境にのみ特化された『思考パターン』では、その「差異」を利用できない。
 AIにとって、「環境」とは「戦う場所」でしかなく、そこにどんな有用なものがあろうと、「背景の一部」として無視してしまうのだ。
 だから、環境を利用し、有利に戦闘を展開してやろう、という視点が根こそぎ欠けている。
 相手は、積極的にここを突いたのだ。


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