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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」
101
:
エヴァンジェSSその20
:2006/10/29(日) 23:13:30
ライガーの脇腹当たり――ジェネレーター部位から、火が噴き上がったからだった。
EN供給が落ち込み、ブースターが稼動を停止する。
推進力を失い、やがてライガーは昇った高度分を真っ逆様に落ち始めた。
そして、下に向けられた視界に、オラクルの姿を捉える。
敵の左腕部からは、青いブレードが伸ばされていた。
――外に出たときに、斬られていた。
日光で、視界が奪われた頃だろうか。
思う内に、視界が暗転した。だけでなく、意識や、思考が拡散していく。
『……この地形で、罠を仕掛けないはずがないだろう……』
マイクが、オラクルからの呟きを拾う。
ライガーが知覚したものは、それが最後だった。
*
炎をまき散らしながら、二脚ACが落ちてゆく。
中空に赤い筋を引いていく様子は、まるで流星のようだ。
だが本物とは違い、途中で燃え尽きたりはしなかった。
最後まで原型を留め、結局は固い地面とぶつかった。
金属のひしゃげる音が僅かに響き、直後、甚大な爆発音が冬の大気を震わせる。
「……こんなものか……」
一部始終を眺め、エヴァンジェが呟いた。
それから、もくもくと上がる黒煙と、愛機――オラクルの左腕から伸びる、青の刀身とを見比べる。
無敵に思えた敵ACも、このブレード一本でどうにかなってしまったのだから、分からないものだった。
(所詮は、無人機だったということか)
エヴァンジェが張った罠というのは、決して難しいものではない。
出口付近で待ちかまえて、出てきた瞬間、ブレードで突くというものだ。
今回は、たまたまジェネレーターに当たったが――もし警戒されていれば、ダメージが入ったかすら怪しいだろう。
(……勉強不足だな、こっちも、向こうも)
思っていると、通信が入った。
オペレーターからではない。
エヴェンジェは、少し迷ったが――結局パネルを操作し、通信ポートを開いた。
「こちら、オラクル」
言うと、すぐさま声が来た。
『我々は、君に追われている者だ。全ての護衛は、君が撃破した。
君の勝ちだ。我々は、東南のビルにいる』
意識に苦く残る、疲弊しきった声だった。
まるで自殺者の遺言のようだ。
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