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試験投下スレッド

388損得勘定・義理人情 ◆5KqBC89beU:2005/06/06(月) 10:31:31 ID:gze6IUQc
 李麗芳は夢を見ていた。意識を失う少し前の光景が、夢の中で再現されていた。
 その時、呉星秀が死んだと放送で聞いて、麗芳はショックを受けていた。
「どうしよう……他のみんなも、いつ殺されてもおかしくないよ」
 泣きそうな顔をした彼女に、宮下藤花が言った。
「“人間にとって最大の快楽とは未来を視る瞬間にある。そのとき人は世界すら
 征服したような気がするものだ”――とか書かれた本があるくらい、人は未来を
 予測したがる。けれど、そうした予測を無条件に盲信するのは、とても危険だ。
 はたして、君の憂いている未来は、本当に実現してしまうのかな?」
「え?」
 呆然と藤花を見つめる麗芳。しぐさも、口調も、まなざしも、まるで藤花ではない
別人のようだった。左右非対称な表情には、人間らしさが欠けていた。
「未来が現在になる時まで、答えの出ない問いだ。そうは思わないかい?」
 藤花の顔をした“それ”が何なのか、麗芳には判らなかった。
「と、藤花ちゃん?」
「あ……はい、なんですか麗芳さん? わたしの顔に何かついてます?」
 小首をかしげた藤花の姿が、闇の中に溶けて――夢が終わった。

 目が覚めた時、麗芳は硬い床の上に寝かされていた。周囲は薄明るい光で
照らされていて、この場所が通路の中だと、見れば判る。
「おや、お目覚めですか」
 声の主は、奇妙な姿の男だった。彼の足元には二つのデイパックが置いてある。
片手の指でこつこつ仮面を叩きながら、もう片方の手にスタンロッドを持ったまま、
彼は彼女に歩み寄ってきた。これから戦おうという態度には見えない。


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