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尚六幾星霜

207「後宮生活」4:2019/06/22(土) 16:05:32
「ちょっ…待てよ、話が飛躍してないか?」
「飛躍はしとらんぞ。これは互いの希望の妥協点だ。俺は官に見つかるまでは後宮に籠って思う存分やりたいと思っていたが、お前は明日出たいと言う。ならば今夜は俺の望みを聞き入れてくれてもよかろう?」
う、と六太は言葉に詰まって視線を逸らした。
「これ以上の譲歩はせんぞ」
冗談めかして言いながら、尚隆は笑う。
別段追い詰めるつもりもないのだが、六太は困惑したような難しい顔をして、黙り込んでしまった。何か言いたいことがありそうなので尚隆も黙って待っていると、暫くしてから六太は窺うように見上げてくる。
「……どうしても三回?」
「ああ」
「……」
「嫌なのか?」
「……嫌じゃないけど」
「けど、なんだ」
「……よく分かんない」
「それでは俺にも分からん」
「うん……」
六太にしては珍しく、何やら言いにくそうに口ごもっている。尚隆は金色の頭をぽんと叩いた。
「––––もし俺の抱き方に不満があれば、言っていいんだぞ」
しかし六太は首を横に振った。
「……不満とか、そんなんじゃない」
六太は少し考えるように沈黙してから、囁くような声で話し始めた。
「だって……おれ、なんか変なんだ。……尚隆に触られると、全身から力が抜けちゃって、内側から熱くなって……自分の身体じゃなくなる気がするんだ。……頭が真っ白になって、わけ分かんなくなるし。……何回やっても慣れなくてさ……むしろ、どんどんおかしくなってる気がする」
それこそが開発の成果というものだが、まさか六太が赤裸々にこんなことを言うとは思いもよらず、尚隆は瞠目して六太の顔を凝視した。色白の頰が今は赤く染まり、伏せた目を縁取る金色の睫毛は濡れて束を作っている。微かに唇を震わせて言葉を紡ぐさまが、何故だかひどく蠱惑的に見えて、尚隆は軽く息を呑んだ。
「嫌なわけじゃないよ。––––ただ、変化が急すぎるっていうか……。多分、戸惑ってるだけなんだと思う……」
尚隆の期待以上の早さで六太の身体は慣れてきて、一昨夜とは全く違う反応を見せてくれる。六太がそうして変わっていくのが、尚隆は楽しくて仕方なかった。だが何の経験もなかった六太のほうはどうだったか。快楽を得られればそれで良い、というものではないだろう。
「……そうだな。戸惑うのが当然かもしれん」
それに思い至らなかったのは、自分で思っていた以上に六太との情事に耽溺していて、視野が狭くなっていたせいだろうか。
「––––そこまで考えが及ばなかった」
金色の頭を出来るだけ優しく撫でながら言うと、六太はほっとしたような笑顔を見せた。
「……なんかお前、そういう殊勝な言い方似合わない」
「たまには俺も反省する」
「へえ、たまに?反省材料はもっとたくさんあると思うけど」
いつもの軽口のように言い、六太はにっと笑った。
「口の減らんやつだな」
尚隆は左手で金髪をくしゃくしゃと勢いよくかき混ぜた。
なんだよ、と六太がそれを止めようと両手を動かしたので、ようやく尚隆の右手は解放された。


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