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【尚六】ケータイSS【広達etc.】

462「槐安夢」4/18:2008/09/20(土) 19:06:08
「──利達兄さん、なんだか最近とっても楽しそうよね」
 夕食の最中、不意に妹の文姫が言った。
 いつも忙しい舎館には珍しく、今夜は家族全員が食卓に揃っている──尤も
旅の途上にある次男坊を除いて、だが。
「おや、お前もそう思っていたのかい。やっぱり女同士、勘が働くねぇ」
 夫の小皿に青菜の炒め物を取り分けながら、母親の明嬉がにっこりと笑う。
「なんだい、利達。何か良い事でもあったのかな?」
 女性二人の会話を楽しげに聞いていた父親の先新も、柔和な顔を更に綻ばせ
つつ息子を見遣って尋ねた。
「えっ!?──別に、これと言って変わった事は……」
 揚げ魚の餡掛けに箸を付けていた利達がどきまぎしながら返すと、普段物静
かで冷静な長兄が珍しく慌てる素振りを見せた事に、文姫はその好奇心を強く
刺激された様だった。
「──そう?でも近頃の兄さん、外出する時すごぉく嬉しそうだから……」
 恋人でも出来たのかと思って、と続いた言葉に含んでいた羮を噴き出しそう
になり、慌てて口許を押さえた利達を見て他の三人が大笑いする。
「兄さんてば、分かりやすいのねぇ……」
 笑い過ぎた所為で、眦に浮かんだ涙を拭いつつ言った妹の円らな瞳を見返し
つい向きになって反論する。
「こっ……恋人だなんて、そんな相手じゃ──」
「ああ利達、言い訳したってだめだめ。その顔にしっかり書いてあるんだから
“好きな人が出来ました”ってね」
 明嬉に畳み掛ける様言われ、思わず頬に掌を当てた利達の姿に再度、家族が
笑う。すっかり遣り込められてしまい、赤面したまま黙り込んだ息子の肩を先
新がぽんぽんと軽く叩いた。
「うちの女性陣には、結局誰も敵わないからなぁ……お前も早く観念して、近
い内にそのお相手とやらを家に連れて来なさい」
「お父さん──……」
 利達が驚いて見上げると、其処には満面の笑みを浮かべた父の顔があった。


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