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【尚六】ケータイSS【広達etc.】

427「青眼 〜前〜」8/12:2008/08/22(金) 18:56:35
 自分が同性も行為の対象に出来るらしい事を、桓堆は過去数回の男娼楼通い
で自覚していた。しかし、彼が相手に選ぶのは声変わりも満足に終えていない
様な少年ばかりだったし、幾ら男娼との躰の相性が良くても、やはり女を抱く
時の快楽に勝るものでは無かった。
 それなのに……と桓堆は忌々しげに吐息する。麦侯の撫で肩の線や細い喉頸
が瞼の裏にちらつく度、彼の欲望はその質量を増していく一方だった。
 ──女みたいに白い肌をしていたな……。
 あまり長時間、陽に当たった事も無いのだろう。殆ど日焼けしていない肌は
淡く滑らかで、きっちりと着込んだ朝服に包まれていてさえ、線の細さがはっ
きりと分かるほど痩せていた。
 書面の束を持つ指先も細く華奢で、筆や笏より重い物など陸に持った事も無
さそうだった──現に桓堆が手を貸していなければ、ほんの僅かな量の書面す
ら満足に運べなかったに違いない。
 しかし、最も印象的なのはその眼だった。
 ほんの少し目尻の下がった切れ長の一重瞼。その奥の淡茶色の瞳は大きく、
微笑むと長い睫毛の下で柔らかく潤んだ。
 ──そうだ、あの眼の所為で俺は……。
 自分に向かって微笑み掛ける優しげな瞳を見てしまってから、何かが少しず
つ狂い始めた様な気がする。
『何だ、ちゃんと笑えるではないか……』
 そう言って自分を見上げる主と視線が搗ち合った瞬間、その瞳から感じ取っ
たのは紛う事無き親愛の情だった筈なのに──。
「……くそ……っ!」
 桓堆は苦々しく吐き捨てると、半袴の前を寛げ自身を強く握り締めていた。
 ──この責任は、しっかり取って貰うからな……。
 年上の男だろうと、遥か雲上の主だろうと、今は一切がどうでも良かった。
桓堆にとって麦侯は、この瞬間、ただ己の感じる狂おしいまでの渇望を満たす
為の存在でしか無かったのだ。


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