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尚六初夜SS「除夜」

17尚六初夜SS「除夜」(16/E):2007/12/31(月) 01:10:10
 俺はいつも、夜半のうちに仁重殿に戻っていた。使令に見張らせていたから、
絶対に誰にも姿を見られていないはずだし、そもそも尚隆のところで騒いで盛
りあがり、遅くにこっそり帰ることはこれまでにもあった。
「褥を整えるのは女官の役目だろうが」
「うん……あっ」
 情事のときのままの汚れた褥を見られれば、誤魔化しようがない。そんな当
たり前のことを失念していたことに初めて気づき、俺は茫然となった。
「それでな……。最初の晩の翌晩、おまえを夕餉に招いたときは房室に大仰に
緞帳が張り巡らされているは、そこらじゅうに花は飾られているはで俺も仰天
した。おまけにそれ以来、衾に香が焚きしめられるようになった上に、臥室に
までこうして花が飾られていてな……」
 俺は絶句した。花にしろ衾の香りにしろ、てっきり尚隆の指図かと思ってい
た。
「それって、女官が気を利かせて……?」
「おそらくな」
 俺は思わず衾を頭からかぶった。道理で尚隆らしくないと思ったわけだ。正
寝の馴染みの女官たちの顔が浮かぶ。恥ずかしさのあまり、体中から火が出そ
うだった。
「絶対にばれてないと思ってた……」
「まあ、いいではないか。どちらにしろ、このままでいればすぐにばれること
だ」
 俺は衾をかぶったまま、うー、と唸った。尚隆がやけに嬉しそうなのが腹立
たしい。新年早々、前途多難だという気がした。

(終)


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