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尚六SS「永遠の行方」

924永遠の行方「絆(76)」:2017/08/05(土) 10:02:49
 そんなある日、六太は散策で正寝の正殿近くに連れてこられた。
「ここから蛇行するように小川を作ってな――」
 玉華殿のそば、何やら延々と掘り返されて工人が作業をしている現場に伴
われ、尚隆にそう説明された。最近工人があちこちで何かやっているなと
思ったら、六太のために整備しているのだという。広い箇所でも幅はせいぜ
い二、三歩、深さは六太の膝ほどの、いわば小さな水路のような小川を作り、
あちこちにままごとのような橋をかけ、途中に池を作り、色とりどりの魚を
放す。凌雲山の頂点にありながら高台からはささやかな滝のような水の湧出
もあるのが宮城の不思議だが、そういった湧水を水源とし、最後は地下に管
を通して雲海に流すという、そんな計画。今のように夏場なら、水遊びもで
きる。どっしりとした趣の玄英宮は、白で彩られた奏の清漢宮のような、殿
閣や園林それぞれが雲海に小島のように浮かんで回廊やらで立体的かつ優美
につながれた水の街ではない。むろんもともと雲海から引かれた水路もある
が、正寝に新たに作られるこれは真水の川になる。さらには戴にあるような
温室を作って、季節に関わらず花を楽しめるようにするらしい。
 そんなこととは知らなかった六太はびっくりしたけれども、自分を楽しま
せるために尚隆があれこれ考えてくれているのを知って心が躍るほど嬉し
かった。既に掘られている場所にぴょんと飛び降りて、底面をちょっと歩い
てみたりもした。
 その後、工事全体の状況を窺えるよう、尚隆は見晴らしの良い高台のひと
つに行って芝に腰を下ろした。そんな彼の膝の間、尚隆を椅子代わりにする
ような体勢で六太は座らされ、後ろから腕を回されて抱きしめられた。工人
以外に遠目に文官らしい姿も見え、六太は恥ずかしい思いをしたが、尚隆の
ほうはまったくの無頓着。むしろ余人の目があると、六太をからかいやすい
のか逆にきわどい戯れをしてくる。そのたびに六太はあわてるのだが、真っ
赤な顔で睨んでも、尚隆は笑っているだけだった。
「あのなー」
「別に良いではないか。俺とおまえの仲だ」
「ここ、外」
「なるほど、屋内なら良いと」




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