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尚六SS「永遠の行方」

912永遠の行方「絆(70)」:2017/08/01(火) 21:06:06

 今日もお茶のあとで長楽殿の周辺をぶらりと散策する。尚隆は六太の手を
引きながら、今日起きたことを適当に喋ってくれるので、六太はたまに相槌
を打つだけで黙ってついていけば良かった。室内で面と向かっているときの
沈黙は気まずいが、こうして開放的な環境でぶらぶらと歩いているなら、さ
ほど気にはならない。
 初めて庭院で手をつながれて以来、尚隆はひんぱんに六太に手を差し出し
てくるようになった。閨で抱きしめられるのと違って触れあうのは手だけな
のに、六太は嬉しいわ恥ずかしいわでどきどきした。
 大きな手の温もりに包まれるのは嬉しい。閨での愛撫はすぐに訳がわから
なくなって翻弄されてしまうが、手をつなぐだけならそんなことにはならな
い。緊張することはするのだが体は適度に離れているし、尚隆は正面を見な
がら歩いて喋ってたまに振り向くぐらいなので、純粋に嬉しさのほうが勝っ
ていた。
(なんかいいな、こういうの)
 六太はようやく少し気持ちが落ち着いて、昼間はほのぼのとした時間を過
ごしていた。
 もちろん閨で睦むのも嫌ではない。何と言っても長年の片恋の相手だ。
 それでも尚隆に抱かれ、一方的に翻弄されて幾度も達すると、なぜか哀し
くもなってしまうのだ。これまでの生活と一変したためもあり、非日常の、
つかの間の夢を見ている気がしてならなかった。
 昨夜はいっそう激しくて、久しぶりに体をつなげて膝の上に乗せられ揺さ
ぶられている間、六太はつい切なくてぽろりと涙を落としてしまい、尚隆を
あわてさせた。
「どうした、痛いのか」
 そんなふうに聞かれ、六太はただ首を振った。夢の終わりはまだだと自分
に言い聞かせて。
(まだ尚隆は宮城に留まっている。きっともうしばらくは大丈夫)
 六太はそんなことを考えながら、時折尚隆が振り返っては雑談の同意を求
める言葉に、笑って「うん」とうなずいて見せた。




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