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尚六SS「永遠の行方」

817永遠の行方「絆(15)」:2017/05/03(水) 22:43:30
 王の臥牀はやたら広いため、眠る際は体が触れあわないのと、そのときはさ
すがに六太に背を向けてくれるのだけが救いだった。だが背を向けられればそ
れはそれで寂しく感じてしまうのが厄介だ。あんなに近くにいるのに却って離
れた気がしてしまうのだから。
(だいたい、俺の膝を動かしたりする時は遠慮なく触るくせに、寝るときは離
れて背を向けるってどういうことだ)
 おかしい、とさすがに六太も思う。そしてひやりとするのだ、本当はあんな
ことをしたくはないのではないかと。なんだかんだで、内心では鬱陶しがって
やしないかと。
(俺が暁紅と取引したおかげで尚隆が助かったのは事実だ。それでさすがのあ
いつも余計な気を回してるんだろうか。そういえば仁重殿から来た女官たちは、
俺を見捨てるべきだって進言した官にかなり憤っていたみたいだ。尚隆は俺に
配慮してることをちゃんと近習に見せて不満をそらす必要があると判断したと
か?)
 もしそうなら寂しいと六太は思った。自分は別に尚隆の邪魔をする気もない
し、今回のことで何か要求するつもりもない。放っておいてくれればいいのに、
と思う。でもそういえば褒美がどうとか言っていたっけ……。
 尚隆と同じ臥室、尚隆と同じ牀榻。ここまで近い場所で長く生活したことは
今まで一度もない。六太にはずっと不相応な望みをいだいているという恐れと
自覚があった。だからこそ自分の心を守るためにも警戒してしまう。嬉しいの
に切ない。幸せなのに悲しい。これ以上一緒に暮らしたら、近さと裏腹に絶対
に報われ得ない現実をまざまざと見せつけられる気がして耐えられそうにない。
 尚隆に運ばれるたびに、何気ない様子を装ってちらりと頭上の顔を見上げて
しまう六太だ。目をそらし続けても不自然だし、かと言って至近距離でずっと
見つめていたら、こちらの精神がどうにかなってしまう。もちろん尚隆だって
不審に思うだろう。




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