したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

尚六SS「永遠の行方」

791永遠の行方「絆(6)」:2017/04/21(金) 19:34:19

 いろいろと考えながら目を閉じた六太が、次に気づくと既に外は明るいよう
だった。黄医の診察を受けてから、背に靠枕を当てられて軽く上体を起こされ
る。小杯をあてがわれて、昨夜と同じような甘みのある飲みものを摂った。
 女官によると宰輔覚醒の知らせを受け、まだ早朝だというのに官が続々と見
舞いに訪れているらしい。むろん長楽殿への昇殿を許されている官だけだが、
それでもけっこうな数にのぼるという。
 しかし六太を疲れさせないため、当面は六太が認めたごく親しい数人に限っ
て面会を受け付けるということだった。
「台輔……」
 許しを得て牀榻に入ってきた朱衡は、普段の彼にはまったくそぐわない、お
ずおずとした声調子だった。
 六太は本当は人払いしたかったのだが、何しろほとんど体が動かないとあっ
て、心配した女官が片時も離れない。仕方なくそのまま話をすることになった。
本音では尚隆の姿が見えないうちに、いろいろ尋ねて認識を合わせておきた
かったのだが。
 少し休んだからか、はたまた薬湯の一種だろう先ほどの甘い飲みもののおか
げか、多少喉の調子も良くなったのが嬉しい。それでも負担をかけないよう、
なるべく喉を使わず小声で話すようにした。そうすればごく近くにいる者にし
か内容が聞こえないから都合が良いというのもある。
 六太は朱衡に笑って「よう」と声をかけてから、こう尋ねた。
「何が起きたんだ?」
 小さな声を聞き取るために耳を六太の口元に寄せた朱衡が首を傾げる。
「何、とおっしゃいますと……?」
「俺、尚隆に迷惑かけたみたいなんだけど……。これでもいちおう呪者には、
王に悪影響がないってことをしつこく確認したんだ。でもあいつがあんなにや
つれてるってことは、実際には影響があったんだよな?」
 朱衡が愕然とした顔で黙り込んだのを見て、六太はいよいよおかしいと眉根
を寄せた。尚隆もおかしかったが、この男がこんな様子を見せることもめずら
しかった。
「台輔、それは」
「麒麟が生きてさえいりゃ、王には何の影響もないと思ったんだけど。考え違
いだったかな……」
「それは」いったん言葉を飲み込んだ朱衡が、やっとというふうに声を出す。
「麒麟とか、そういうことではなく。台輔の意識が戻らないとなれば、主上が
心配なさるのは当然かと」




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板