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尚六SS「永遠の行方」

750永遠の行方「遠い記憶(33/57)」:2017/04/02(日) 13:23:14
 六太を誘拐されても動揺を示さず、泰然と構えていたという尚隆。翻って斡
由は、追い詰められて逆上した。
「まあ、斡由とは違うわな……」
 六太もさすがに否定はせずにつぶやく。
 斡由は天帝などいないと言いながら、最後は昇山しておけばと嘆いていた。
いつもその場かぎりの言を弄しただけで、実際のところは信念も何もなかった
のだ。
「もちろん拙官は、みずから過ちに気づけたわけではございません。もともと
斡由を盲信し、元州が不利になって初めて迷いを感じたくらいです。むしろそ
のような態度が斡由を増長させたのかもしれない、きちんと気づいて諌めてさ
えいれば、それなりに良い為政者であり続けてくださったのかもしれない。そ
んな拙官に他者を非難する権利などありません。これからは誠心誠意、主上に
お仕えさせていただきます」
「うん、まあ……がんばれよ」
 そんなふうだから、以前のように六太が「また尚隆が行方をくらまして官が
探してる」と言っても、白沢は「何か下界に用事がおありなのでしょうかな」
と妙に理解を示して笑むようになった。
「思えば主上は単身、元州城に潜入できるほど活動的なおかたでした。もしや
今回も、何やら探っておられるのでしょうか」
 ちょうど朱衡と曠世も伴って仁重殿の庭院を散策しているときで、朱衡は少
し諦めたように「実は以前から間諜の真似事をなさっておられます」と明かし
た。
「なんと。人手不足も極まれりというところですな――」
 そんな中、曠世は立ち止まって周囲の木立を見回した。
「仁重殿周辺の木々はよく手入れされていますね。他の場所はみな人手を減ら
したままのようで荒れている箇所も少なくないのに、主上は台輔を気遣ってお
られるのですね」
「え?」
 六太は同じように立ち止まって周囲を見渡したが、よくわからず「そうか?」
と言った。白沢と朱衡が話しながら徐々に遠ざかる中、曠世は笑みを浮かべて
「ああ」と何やらうなずいた。




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