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尚六SS「永遠の行方」

726永遠の行方「遠い記憶(17)」:2017/03/14(火) 21:52:36
 六太は目を丸くして相手をまじまじと見た。思い詰めた様子の曠世は、むし
ろ六太を睨む勢いでこわばった視線を向けている。白沢は小さく溜息をつくと、
曠世に「控えなさい」と叱責した。
「いや……別に構わない、け、ど」
 六太は白沢に取りなしながらも口ごもった。曠世は何か言いたげだったもの
の、いったん飲みこむことにしたらしい。謝罪するように深々と頭を下げたあ
と、しばらく口元をぎゅっと引き結び、六太が瞬きながらも見つめているうち
に再び口を開いた。
「ご無礼いたしました。畏れながら台輔に伺いたいことがございます。お許し
いただけるでしょうか」
「あ、ああ。何だ?」
 白沢の着任の挨拶のときは、曠世はただ六太を畏れ敬っていただけに見えた。
だが今は敵意とまでは行かずとも気圧されるぐらいには鋭い覇気を放っており、
六太は困惑を隠せなかった。
「台輔は斡由の射士だった男、妖魔を飼っていた駁更夜と古くからのお知り合
いだったと伺いました。だから更夜が斡由の命で台輔をさらったとき、台輔は
斡由の言いぶんに理解を示して元州城にみずからお留まりになったのだと。宮
城におられた台輔はいつ、元州の射士とお知り合いになったのですか?」
「ああ、そのことか」
 六太は何かほっとしてうなずいた。確かに不思議に思われるかもしれない。
二十年近く前の懐かしい出会いをちらりと思い浮かべ、六太は我知らずほほえ
んだ。
「十八年ぐらい前に一度会ったんだよ。息抜きに使令に乗って元州の黒海沿岸
あたりを飛んでたら、例の妖魔に乗って飛んでた更夜とすれ違ってさ。びっく
りして追いかけたんだ。まだ更夜は十かそこらで、斡由に拾われる前で。ずい
ぶん汚い格好をして腹を空かせてた感じだったから、一緒に飯でも食おうって
誘ったんだ。ちょうど餅の袋を持ってたし」
 そう答える。曠世が何かを待つようにしばらく黙っていたので、六太は首を
傾げた。
「――えっと?」
「それで……?」
「うん、それで。それでいろいろ話しながら、一緒に餅を食べたんだ」
「……は?」




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