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尚六SS「永遠の行方」

710永遠の行方「遠い記憶(6)」:2014/07/13(日) 10:44:46
 六太はうつむいて、「そうか……」とつぶやいた。斡由は暴君にはならない
と更夜は言った。だが実際は、その時点で既に血にまみれた暴君だったのだ。
「白沢は生まれも元州か?」
 普通、国官以外の官吏になる場合は州から出ることはない。つまり生まれ
育った州の官府で登用される。
「さようでございます」
「遠く離れてしまうと、元州のことが心配じゃないか?」
「それは、もちろんでございますが」少し驚いたように口ごもってから「しか
しもう拙官が関わっては、逆に元州のためにはならないでしょう。いずれにし
ても既に州宰の任を解かれております」
「まあな。にしたって、太保に任じた尚隆も滅茶苦茶だけど」
「……わからないのです」
「ん?」
「わたくしどもがいったいどこで何を間違ったのか」
 白沢は苦悩の声音で心中を吐露した。
「元州の事情を斟酌してくださった台輔には正直に申し上げます。拙官には元
伯が掲げた大義自体が間違っていたとは、今でもどうしても思えないのです。
もちろん元伯の本性を見抜けず、かしらに戴いたことは大きな過ちでした。そ
れだけはわかるのですが」
「うん……」
 何をどう言いようもなくて、六太はただ相槌を打った。
 謀反は確かに大罪だが、尚隆に非があったのも事実なのだ。最後の最後でた
またまうまく転んだから王の首がつながっただけで、元はと言えば、重要な堤
さえ整備せずに長年放っておいたつけが回ってきたに過ぎない。
「しかしながら、ああいう結末になったからには何かが間違っていたはずなの
です。もしかしたら、そもそもの最初から、何もかもが」
「……そうなのか?」
 意外な返答に六太は驚いた。しかし手段は間違っていたかもしれないが、あ
のときの元州には大いに同情の余地があったのではなかろうか。元州の民が毎
日洪水の恐怖に怯え、何とか自治を得て堤を整備したいと切望した心情は、六
太にもじゅうぶん理解できた。




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