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尚六SS「永遠の行方」

686永遠の行方「王と麒麟(267/280)」:2013/12/01(日) 09:58:38
 それだけ言って口をつぐむ。すぐには誰も口を開かず、しばらく小部屋の外
の談笑の声だけが響いていた。
「……失道ではない」
 やがて尚隆が穏やかに答えた。恂生はただうなずいて、次の言葉を待った。
「事情があって詳しいことは明かせぬが、これは事故のようなものだ。だがも
ともと神仙は飲まず食わずでも相当もつし、特に麒麟は天地の気脈から力を得
る生きものゆえ、仮にこのまま目覚めぬとしても生命に別状はない。したがっ
て王にも国にもなんら影響はない。その点は蓬山のお墨付きだ」
「そうですか……」恂生は安堵したように息を吐いた。それから複雑な表情で
六太を眺めやる。「神仙は病気にならないし、大抵の怪我もすぐ治るって聞い
てたのに」
「それはそうなのだが、何事にも例外のような事柄はあってな。だがいくら国
や王に影響がないとはいえ、六太を見捨てるわけにはいかん。それゆえ俺たち
は王の命を受け、こうして手を尽くしているわけだ」
 恂生はまたうなずき、「わかりました」と答えた。
「答えてくださってありがとうございます。あまり役に立てないかもしれない
けど、他に俺にできることがあったら言ってください。台輔だからっていうだ
けじゃなく、六太は友達だし恩人でもあるんです」
「うむ。何かあればぜひ頼もう。ところでちと聞きたいのだが」
「はい」
「他の海客らもこのことは?」
 何を聞かれたのかすぐ察したのだろう、恂生は首を振った。
「守真も悠子も、六太の身分は知りません。華期は――知ってるんですよね?
宮城から皆さんを案内してきたんだから。守真は薄々疑っていたとは思うけど、
今回のことで思い違いだったと考えたと思います。たぶん前に鳴賢が、六太が
養父母と一緒に地方に行ったって聞いたときに」
 しかし彼はそれが言い訳にすぎず、何かを誤魔化そうとしていると察したわ
けだ。鳴賢に関しても事情を知っているのではと疑っているだろうが、そうで
はない可能性も考え、確信があるまでは注意深く口をつぐんでいるというとこ
ろか。




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