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尚六SS「永遠の行方」

60永遠の行方「予兆(27)」:2008/04/27(日) 12:30:05
 拍子抜けした鳴賢がそう言うと、六太は「まさかぁ。ここ、何階だと思って
んだよ」と笑った。
「それと、ほい、これ。鳥の餌」
 懐をまさぐった六太が、取り出した小袋を楽俊に差し出した。
「ああ……いつもすんません」
「鳥?」
 話が見えずに、敬之がぽかんとしたので、鳴賢が言った。
「もしかしてあれか? 文張のところで何度か、綺麗な大きな鳥が窓枠に止ま
っているのを見たことがあるけど。餌づけでもしてるのか?」
 すると楽俊は、なぜか口ごもった。
「そのう。別に餌づけをしてるわけじゃねえ。もちろん飼ってるわけでもねえ。
勝手に飛んでくるんだ。おいら、大抵は今みたいに鼠の姿だから、人間と違っ
て鳥も警戒心が薄れるのかもな」
「へえ。で、その鳥の餌を六太が?」
「まあな。いつも楽俊には泊めてもらったりして世話になってるし、お礼とい
うか賄賂というか」
 六太がぺろりと舌を出して悪戯っぽく言ったので、鳴賢は敬之と顔を見合わ
せて「随分ささやかな賄賂だな」と苦笑した。
「で、こうして賄賂も渡したことだし、今晩泊めてくれねえ?」
 拝むような仕草をした六太に、楽俊は呆れたように言った。
「ご気分が悪いんでしょう? こんなとこで油を売ってないで、早くお帰りに
なったほうが」
「わかってねーな、楽俊」六太は唇を尖らせた。「気分が悪いから、まっすぐ
帰りづらいんじゃねーか。だいたい十日ぶりに帰ったら、連中の嫌味攻撃が待
ってるに決まってる。近場で休んで心構えをしとかないと」
「十日……またですか」
 ふたたび肩を落とした楽俊の横で、鳴賢も呆れて「それだけ遊び歩いていて、
よく小言で済むな」と言った。すると六太は不満げに頬をふくらませて抗弁し
た。
「俺なんか、しょ――風漢に比べりゃ可愛いもんさ。あいつと一緒なら俺も二、
三ヶ月行方をくらませたことはあるけど、あいつはひとりでも平気でそれくら
いいなくなることがあるんだから」




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