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尚六SS「永遠の行方」

501永遠の行方「王と麒麟(135)」:2012/07/11(水) 21:41:49

 大学で行なわれた各種試験が終わり、提出する論文のめどもついた鳴賢は、
久しぶりに団欒所に赴いた。今度こそ卒業したいと必死に頑張ったものの、既
に卒業が確実視されている楽俊と違って感触はよくない。それでも何とかふた
つの允許を得る見通しは立ったため、少なからずほっとしていた。
「へえ……。六太って官吏の養子だったんだ……?」
 恂生は、彼を手伝いがてら鳴賢が六太のことに言及すると、驚きではなく当
惑の面持ちになった。何か不自然だったろうかと心配になった鳴賢だが、楽俊
に確認したかぎり六太はほとんど自分について話していないはずだし、この設
定で通すしかないのだ。不思議そうな顔を作り、こう尋ねてみた。
「長い付き合いらしいのに知らなかったのか? だいたいそんなに意外か? 
官吏じゃないのに仙だったら、普通は官吏の身内に決まってるだろう」
「あ、いや。――うん、そうか。養い親にくっついて他州に行ったのか」
「でも一時的なものらしいから、いずれは戻ってくるんじゃないか」
「ふうん……。しかしそうなると残念だな。六太がいないとここも淋しくなる」
「仕方ないさ。官吏なんてのは出世したければ命令ひとつでどこへでも行かさ
れることを覚悟しなきゃいけないんだから。もちろん急なことだったから、六
太も皆に挨拶できなかったことを残念がっていたらしい。俺も後になって知り
合いの官吏に聞かされたくらいだ。そのうち落ち着いたら手紙でもくれるん
じゃないか」
 鳴賢は何気なさそうに答えてから目の前に置いた板に集中し、大きく「海客
団集室」の文字を書いた。ついで紙に今月と来月の開放日の予定と、誰でも気
軽に訪ねてほしい旨の告知文を書く。板は扁額として入口に掲げ、紙はその下
に掲示することになっていた。
 国官を目指すくらいだから鳴賢は筆跡には自信がある。黒々とした墨で鮮や
かに書き上げられたそれは堂々としていて、掲示を提案した鳴賢自身も満足し
た。
「こんな感じでどうかな」
「うん、すごい。格好いいな。俺なんかいまだに筆の扱いに苦労しているから、
そうやって一発で書かれると尊敬する」




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