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尚六SS「永遠の行方」

447永遠の行方「王と麒麟(94)」:2011/09/23(金) 12:32:39
 一同を見回した白沢に、朱衡が「そうですね」と応じ、少し考えてから続け
た。
「拙官も折に触れて身近な者に尋ねているところですが、実のところ興味深い
話はありました。もう少し詳しく聞いてからと思ったのですが、簡単に申しま
すと、国府にある海客の団欒所についてです。台輔がご身分を隠した上でちょ
くちょく足を運んでおられたことは冢宰もご存じですね」
「もちろん聞いています。そもそも団欒所は靖州侯たる台輔の命があって設け
られた場所ですから」
「秋官府の下吏のひとりが興味本位でたまに訪ねるようになったそうで、その
者から聞いたのですが、団欒所では海客と関弓の民が和やかに交流し、菓子を
持ち寄って飲食したり、蓬莱の楽器を弾いて一緒に歌ったりしているそうです。
蓬莱やこちらの歌をね。聞けば台輔も海客を真似て楽器を演奏することがある
とか」
「ほう」
 尚隆が意外そうな声を上げ、他の者も一様に驚いた。楽器の演奏などという
高雅な趣味は、やんちゃな雁の宰輔には似合わないものだったし、事実そんな
場面を見たことがある者はいなかった。
「それは知らなかった。時々団欒所に通っていることは聞いていたが……。俺
が手慰みに笛を吹くとき、いつもつまらなそうにしておったから、その手の物
に興味はないと思っていたぞ」
「もちろん台輔は楽人ではありませんから、あくまでお遊びの域を出ないで
しょう。一度、件の下吏に案内させて扉の外から窺ったことがある程度なので
詳しくは存じませんが、太鼓をぽこぽこ叩くとか、その程度のようですよ」
「だがそれはそれで楽しそうだ」尚隆はおもしろがり、しきりに「あの六太が
な」とひとりごとのように繰り返した。




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