したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

尚六SS「永遠の行方」

385永遠の行方「王と麒麟(48)」:2011/05/18(水) 21:00:47
 大宗伯が眉をひそめて言う。大司馬とて、これまで海客に良い印象を抱いて
いるとは思えない男だったので、彼が王の提案にすんなり同調したのも他の官
には意外だった。だが、
「海客は軟弱な上に上位の者に対する当たり前の礼儀や敬意を持ち合わせぬ不
遜な輩が多い。そんな者に任せられぬのは道理だが、海客にもきちんとした者
はいる。特に件の軍吏は蓬莱でも軍にいたことから、雁と王朝に対する敬意を
きちんとわきまえており、真面目で口も堅いことがわかっている。拙官も何度
か実際に話をしており、信頼にたる男だと思う」
 大司馬にそう説明され、大宗伯は他の官とうなずきあいながら「そういうこ
となら」と同意した。
「今回の事件を景王にお知らせしたほうが良いのでしょうか?」
 朱衡が尚隆の意を尋ね、他の者も主君の顔を見た。むろん普通ならば他国に
知られることは避けたい。しかしもし返信を要する書簡だった場合、放置すれ
ば逆に疑念を抱かれかねない。卑しくも王である以上、大っぴらに騒ぐことは
なかろうし、むしろ何らかのもめごとを察して気遣いを示してくれるとしても、
事情を知らぬ者によって他国の宮城で話が広まる事態は避けたかった。
 尚隆は事も無げに肩をすくめた。
「まあ、陽子と――景麒には経緯を知らせてやったほうが良かろうな」
「しかし、主上。このような事態を安易に漏らすわけには」
「六太とはひんぱんにやりとりをしていたようだから、音沙汰がなければ陽子
も心配するだろう。それに慶もまだ安定には程遠いが、もう少し歳を取ってこ
なれればともかく、陽子のことだから不審に思えば早々に鸞でも送ってこよう。
書簡の封蝋が玉璽ではなく陽子の私印であったこと、署名が『陽子』のみだっ
たことを考えると、あくまで私的で気楽なやりとりとしか思えぬから、むしろ
話が漏れぬうちに言い含めたほうが安全だ」
「それはそうですが」
「六太と親しかった者を順次聴取して、あれの望みが何であるかをつきとめる
という作業もある。帷湍は他の麒麟にも尋ねたほうがよいと言っていたが、雁
が後援している陽子や景麒なら行き来しても不思議には思われぬ」




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板