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尚六SS「永遠の行方」

374永遠の行方「王と麒麟(44)」:2010/10/25(月) 19:10:42
御髪には感覚も意識もないが、台輔のお体の一部ではある。そして興味を引か
れた魚が御髪の先に食いつく、すなわち解呪条件が成立すれば、引っ張られた
感触で台輔は『望みどおり魚がかかった』と認識して眠りから覚めることにな
るでしょう」
 面々は困惑し、「わかったような、わからないような……」とつぶやいた。
「しかし……そうすると、むしろ暁紅が設定した条件を解除するだけでは不十
分で、状況としてはより厳しいということでは?」
 白沢の問いに、だが大司空は首を振った。
「魚が食いつかずとも、御髪が池に垂れて何事かを待ち受けていることにはな
るわけですからな。意識そのものはないとはいえ、かすかに身じろいだり目を
開けたりなさるのがその証拠です。ということは暁紅が設定した条件の成立を
待たずとも、もしかしたら台輔は何かをお感じになってお目覚めになるかもし
れない。魚が食いつくという厳密な条件ではなくとも、たとえば池にさざなみ
が立つとか、流れてきた小枝がからまるなどして御髪が揺れればお気づきにな
るかもしれない。成立した解呪条件が完全に外部の事象の場合、それは言うな
れば直接台輔のお体に手をかけ、揺り動かして強制的にお目覚めいただくよう
なもの。主上の場合がこれに当たります。しかし望みがかなうという、ご本人
の心持ちが鍵となる場合、もともと台輔はそれを待ち受けておられる状態なの
ですから、当初想定していたよりは明るい希望が持てると言えます。ただし先
ほど例に挙げた豊作の場合、実際に豊作になることはもちろん、それを台輔が
お知りになることも必要にはなるでしょうな。近習が台輔のお世話をしながら
『今年は豊作だって』と世間話をする程度でいいのですが」
「なるほど……」
 ようやく納得した官らはうなずいた。いずれにしても難しい状況であること
は変わらなかった。
 ふと大司馬がこんなことを尋ねた。
「この種の呪については冬官もあまり詳しくはないと聞いたが、実験はできな
いのかな?」




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