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尚六SS「永遠の行方」

347永遠の行方「王と麒麟(23)」:2010/08/01(日) 10:22:41
「まさか、そんな」
「実を言うと俺、倩霞のことで夏官に尋問されたんだ」
 彼は房間の中に玄度を手招いて扉を閉めた。向かい合って座り、内々に指示
されていたとおり、頭の中で何度も反芻した筋書きを口にする。
「事が事だから、やたらと口外するなと言われてたから、ずっと黙ってた。で
もそのうち、おまえや敬之にも呼び出しがあるかもしれない。何しろ謀反だ、
少しでも倩霞に関わったと知れた人間は厳しく尋問されるだろう」
 玄度は目を大きく見開いた。わなわなと震えた彼は口を開いたが、なかなか
言葉が出ないようだった。
「――じゃ、あ――本当なのか……」
「少し前に倩霞を訪ねていったら、会えたことは会えたんだけど妙だったんだ。
肌が――なんて言うか、崩れるんじゃないかってぐらい酷いただれかたで、ど
う見ても悪病に冒されたとしか思えなかった。なのに倩霞は何も気にするふう
もなく『近々おもしろいことが起こる』と楽しそうに言ったんだ。気が動転し
てたんでよく覚えてないが、『雁の終焉を見せてあげる』とか何とか言ってた
と思う。すぐ帰ったんだが、しばらくして国府に呼び出された。近所の人が俺
を見かけていたそうで、夏官府は俺が倩霞を訪ねていったことは知っていて、
彼女が仙で梁興の愛妾だった女で、国を傾けるために呪を使って光州に病をば
らまいたと言っていた。倩霞の病も呪のせいだと。他人を害する呪を使うと、
術者も報いを受けるらしい」
 玄度は茫然とした様子で、床几に座りこんでいた。鳴賢は六太とのやりとり
を思いだし、また涙が出そうになって声が震えた。
「小間物屋は、関弓で町の様子を探るために開いていたらしい。引っ越し先の
邸も以前から倩霞の物で、そこが根城だったって聞いた。それ以上の詳しいこ
とは、俺も教えてもらえなかったんでわからない」
 そう言うと玄度は、彼も涙ぐみながらようやく答えた。
「お、俺、倩霞の邸に行ったら――夏官があふれてて通してくれなくてさ。何
が起きたのか聞いたら謀反だって。謀反を起こした仙の女を成敗したから、邸
を調べているところだって」




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