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尚六SS「永遠の行方」

295永遠の行方「呪(199)」★オリキャラ中心★:2010/03/12(金) 19:11:17
 だが特に危険はないように思われた。それに華やかに違いない首都での暮ら
しには憧れたし、何よりも王のそばにいけるのは大きな誘惑だった。
「それは良い考えだわ。ではそれまではしばらくここで、人目につかないよう
ひっそりと暮らしましょう。どうせあの大量の書類を読み解いて、どんな呪を
利用できるか時間をかけて検討しなくてはならないのだもの。枯瘠環にしても
一度に死の呪を発動させるのではなく、時間差を設けて事件を起こす余地があ
るかどうか探らなければ」
「そのことなら大丈夫だと思います。事細かに書かれていた指示を素直に解釈
するかぎり、逆にひとつひとつの死の呪は適当な時間をおかないと発動しない
ような書き方でしたから。ただひっそりと暮らすとしても、王の噂なり動向な
りを得るには、今のうちに世間と接点を持っておくほうがいいんじゃないでし
ょうか。何か商売をするとか」
「商売ですって? 下賤の者のように卑しい仕事をするというの? とんでも
ない!」
 驚いた暁紅は思わず強く調子で抗弁したが、浣蓮はそれを不快に思う様子は
なく、むしろ地道に彼女を説得した。
「実際にお金儲けをする必要はないんですから、要は怪しまれなければいいん
です。お嬢さまのご実家も商家だったんですし、聞こえの良い商売なんていく
らでもあるじゃありませんか」
「まあ、おまえが言うなら……」
 相手の言には一理あったので、暁紅は不承不承浣蓮に譲った。
 その後、彼女らは先行きのことをあれこれ考えながら、互いに案を出してい
った。とりとめのない内容も多々あったものの、かつて貞州城で毎晩語らった
ような夢想に比べれば、目的がはっきりしているぶんずっと実のある内容だっ
た。
 そのまま大した事件も起きずに十年が過ぎ、何の監視もないことを確信して
から、ふたりは住まいを関弓の近くに移した。その際、念のために別人を装う
ことにし、新しく戸籍を手に入れることにした。むろん簡単にできることでは
ないが、梁興の遺した財宝をもってすれば方法はあった。




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