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尚六SS「永遠の行方」

273永遠の行方「呪(178)」★オリキャラ中心★:2009/12/03(木) 22:27:09
「あの者らは、自分たちが砂上の楼閣に住んでいることを気づいていないので
すわ。光州ではなくこの貞州において呪具を使うこともできますのに、そんな
ことも知らずにお嬢さまとわたしを邪険に扱って」
 周囲を警戒して夜ごとひそかに語らいながら、浣蓮はいつもそう言って女主
人と自分の自尊心を保った。何しろ語る時間ならたっぷりとある。それに実際
に呪具を見たことがなくても、州侯の権威のもとに王への復讐を意図して開発
された呪なのだ。効果がないはずはなく、おそらくは聞かされた通りの威力を
発揮するに違いない。
 梁興に教えられた隠し場所は、ほとんど使われなくなっていた古い隧道の枝
道だった。途中が迷路のように入り組んでいたがために、道を知らない者が不
用意に入りこめば、二度と光を拝めずに横死するのは必至。それでなくとも籠
城の際、万が一の王師の進入に備えて件の枝道に通じる分岐は封鎖され、落城
直前に周囲の岩を破壊して完全に塞いだとも聞き及んでいた。その後、枝道を
復旧したか否かはわからなかったものの、もともと使われなくなっていた場所
にそう手間をかけたとも思えない。つまり州城に通じる最奥部は閉ざされて打
ち捨てられたままだろうが、それゆえに下界側の入口からなら容易に入り込め
るだろう。
 ただしこれだけ時間が経てば、整備されていない隧道なら落石などで道が埋
もれている可能性もあった。だがどちらもそのことはあえて考えないようにし
ていた。誇りの拠りどころである呪具が失われてしまったと考えることは絶対
にできないからだ。
 実際には、国府による監視が終わったと確信できる頃まで殊勝に過ごし、そ
のあとで知恵を絞れば光州城の様子を見に行くだけの理由は簡単に見つけられ
ただろう。したがって呪具の現状を知ることも可能なはずだったが、暁紅らは
毎晩楽しく語らうだけで行動に移すことはなかった。たとえ既に呪具が失われ
ていたとしても、ここで王や貞州城の者にどうやって復讐するかを語り合って
いるぶんには、自分たちのものとして楽しい想像を巡らせることができるのだ
から。




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