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尚六SS「永遠の行方」

251永遠の行方「呪(159)」:2009/10/10(土) 13:07:30
 そう言われて鳴賢は思いだした。ずいぶん前、確かにそんな話をしたことが
あった。彼自身はその場の勢いで応じただけで、そこまで厳密な「約束」とは
考えていなかったのだが。
「き、気にしないでくれ。そもそも六太は死ぬわけじゃない。ただ眠るだけだ。
もしかしたらちょっと長く眠っているかもしれないけど――それだけだ」
 ふたたび泣きそうになりながらも何とかこらえる。六太はうなずくと、ふと
厳しい顔つきになった。
「それとおまえにはさらにつらいことを頼まなきゃいけない」
「言ってくれ。俺にできることなら何でもする」
「無事――という言い方も変だが、呪にかけられてしまえば俺は用済みのはず
だ。それが暁紅との約束だからな。だからおまえには即座に国府に走ってもら
って、俺を宮城に運ぶための官を連れてきてもらいたいんだが、やはり少し懸
念がある。なのでさっきの書面を届けるだけじゃなく、昏睡に陥った俺を、そ
のままおまえの手で国府まで運んでもらえるとありがたい」
 鳴賢はうなずいた。言われずともそのつもりだったのだ。無防備な六太をこ
んな場所にひとり残して行けるはずがない。呪にかけられるのも耐えられない
というのに。
 何より暁紅が本当に約束を守るつもりか怪しいものだ。か弱い女人とはいえ、
六太が使令とともに無抵抗となってしまえば、息の根を止めることも簡単にで
きる。鳴賢には六太のように謀反人を信じることなどできはしない。ここでは
無力な立会人でしかないから、仕方なくなりゆきに任せているだけなのだから。
 六太が「ありがとう」と言って立ち上がった。そのまま暁紅の元に行くのか
と思った鳴賢は、とっさに彼の手をつかんで引き留めた。
「主上に言伝がいらないというのはわかった。でも市井の個人的な知り合いに
簡単な文(ふみ)を書くのはどうだ? 六太の身分や今回のことを報せるわけ
にはいかないにしても、文張とか――そ、そうだ、風漢とか。ずいぶん親しか
ったじゃないか。ご機嫌伺いの挨拶くらいなら、そんなに変には思われないだ
ろうし」




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