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尚六SS「永遠の行方」

233永遠の行方「呪(142)」:2009/09/18(金) 21:03:38
「麒麟の生命は王の生命とつながっている。その呪が俺の生命を脅かさないと
約束できるか? 俺が昏睡に陥ると同時に王は目覚め、王の生命にも健康にも
害は及ばないと保証できるか?」
「そのように計らったと言ったでしょう。信じられないのなら、何よりも我が
身が可愛いのなら、黙ってここを立ち去ることね」
「俺には多くの使令がいる。そいつらはどうなる? 同じように意識を封じら
れるのか、それとも自由に動けるのか。ほとんどはこの場で俺の影に陰伏して
いるが、身辺から離れている者もいる」
「影の中の使令はおまえとともに封じられる。他はどうなるか試してみる? 
完全に意識を封じられ、息をしているだけの木偶と化した麒麟の使令が暴走し
ないかどうか」
 わずかな躊躇のあと、六太はうなずいて「わかった」と答えた。
「離れている使令もすべて呼び戻す。俺はおまえを拒まない。潜魂術でも何で
も使うがいい」
「台輔!」
 今度こそ悲鳴を上げた鳴賢に、六太はなだめるように言った。
「さっきも言ったとおり、人の身体や精神に干渉する術は呪者に相当な負担を
かける。何よりも人の心の中は、常に変化する迷路のようなものと聞く。だか
ら潜魂術は、術者を迷路で迷わせないために、受け手が術を受け入れる必要が
あるのだと。ならば目的の情報以外はほとんど読みとれないだろうし、俺の最
も望まぬことが何かくらい、すぐにでも死ぬ女に知られても大した問題じゃな
い。むしろ余力のある今のうちにやってもらわないと王が助からない」
「でも――でも――!」
「鳴賢……」
「夢も見ない眠りなんて――死と同じじゃないか!」
 ついに鳴賢は泣き声を上げた。顔も知らず姿を見たことさえない王は、むろ
ん尊崇の対象ではあるものの、彼にとって記号と同じだ。だが六太は違う。何
年も何年も、友人として過ごしてきた。ともに騒いで楽しい時間を共有し、さ
さいな喧嘩をし、悩みを語り合い――。
 しかもその大事な友人の危難に、自分は何の役にも立たないのだ。




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